「ええっ、違ったのぅ!?」 エミィが驚く中、夢華が言った。 「あの先輩、この前行った、スイーツ屋さんの子どもだったの」 友希が言った。 「この前の、って、スーパーウルトラグランドスペシャルデリシャスゴージャスメガトンパフェの完食したら、っていうイベントをやった、あの……?」 夢華がうなずく。 「あの時さ、スーパーウルトラグランドスペシャルデリシャスゴージャスギガトンパフェも完食して、チケット、もらったでしょ?」 愛望が言った。 「そうだったわね」 と、夢華は三人とわかれた後の事を話した。
「ごめんね、来てもらっちゃって。早速なんだけど、来て欲しいところがあるんだ」 「来て欲しいところ?」 「うん。喫茶店なんだけど。……そこ、僕の家なんだ……」 「……家?」 昌晴がうなずいた。 そして向かった先は。 「ここ、先週の日曜日に、イベントやった……」 「うん」 と、昌晴が振り返る。 「まあ、入ってよ……」 ゆらり、といった感じで、昌晴がドアまで行き、取っ手をつかんで引き開ける。 キィ、と、きしんだ音を立てて、ドアが開く。 恐る恐る中に入ると。 「ああ、いらっしゃい!」 と、店のママとウェイトレス(おそらく昌晴の母と姉だろう)が笑顔で迎えた。 「こ、こんにち、は……」 やはり恐る恐るカウンターへ行くと。 昌晴が言った。 「あのイベント、誰もクリア出来ないはずだったんだ……」 「……へ?」 昌晴の言葉に、首を傾げていると、昌晴は言った。 「なのになのに! クリアする人がいたなんて!」 なにがなんだか、わからないでいると、ウェイトレスが苦笑を浮かべて言った。 「いやぁさ、あのイベント、弟の……昌晴のプランだったの。絶対、クリア出来る人なんか、いないって。それがクリアしちゃった人がいたもんだから、ショックだったみたいでね」 昌晴が言った。 「是非、リベンジしたくて! クラスメイトの中本に、新しいプランのモニターをしてもらおうと思ったけど、あいつ、甘いものが苦手だから。で、いろいろと考えて、モニタリングと同時に、リベンジも果たそうと思ったんだ! 夢の木中学二年二組、岸夢華さん、君に、僕のすべてを……このプランにかけた情熱のすべてを、ぶつけるッ!!」 ビシィッ!と、昌晴が夢華に向けて、右の人差し指を突き刺してきた! 「……」 「逃げることは許さないッ!」 カウンターの向こうで、ママが笑顔で言った。 「ごめんねえ、バカな息子で。……ということで。はい、スーパーウルトラグランドスペシャルデリシャスゴージャステラトンパフェ。……あたしらにも、商売人の意地ってもんがあってねえ……」 ママも、ウェイトレスも笑顔だったが、どこか殺気をにじませる、そんな笑みだった。
友希が不安げに言った。 「で、どうしたんですか……?」 「完食してやったわよ! 挑戦された以上、受けるのが礼儀だし。……げぷっ」 「そ、そうなんだ……」 エミィが、困ったような笑みを浮かべる。 「うー、当分、スイーツは見たくないぃぃぃ〜」 そう言って、夢華がまたゲップをする。 愛望が言った。 「胃薬、飲む?」 「愛望先輩、持ち歩いているんですか? ……げぷっ」 「ポーチサイズなんだけど、救急エイドセットの中に入れてるの」 「……ください。ゲプッ」 「じゃあ、私、何か飲み物買ってくる」と、エミィが駆け出した。 友希が一言。 「これをきっかけにして恋が芽生えたりしませんか?」 夢華は速攻で言った。 「うん、しないから!」
(しょの1の1とか、1の2とか、そのへん・了)
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