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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第109回   エピローグ・2
 ファン・タ・シー・キングダムでも、数年が経った。
 高台にいて、エミィは作業の確認をしていた。アイ・スクリームやクーキョンが現場で指示を出している。
 コードックがやってきて、エミィの左隣に立った。
「まさか、ファン・タ・シー・キングダムの領地の一部に、サービ・シー・ランド、ムーナ・シー・ハイランド、クール・シー・アイランドの難民を受け入れるための自治領を建設するとはな」
「女王様に感謝しなさい」
 エミィは笑顔で言う。
「……お前が進言したと聞いた」
「遊んでた土地がもったいなかっただけよ」
 コードックが苦笑する。
「それに、この件についてはカーナ・シー・エンパイアのオサキ・マックラー皇帝や、国の人たちも、全面的に協力してくれてるわ」
「次元壁は、取っ払ったんだったな」
「ええ。あの事件が収束した後、すぐに」
 コードックが開発が進む区画を見ながら言った。
「あのあと、すぐにファン・タ・シー・キングダムが、カーナ・シー・エンパイアの復興に尽力した。そのお礼ということか」
「お互い様なのよ、世の中って。それに、女王様の中に、かつての女王ターノ・シーがやってしまったことへの罪滅ぼし、という思いも、お有りなのかも知れないわ」
 コードックが神妙な顔になる。
 エミィは言った。
「また、出かけるんでしょ、彼女をサガしに?」
「……どうかな? もうあれから何年も経った。だが、未だに……」
 コードックがそこまで言ったところで、エミィは左手の人差し指を立てて、コードックの唇の前に持っていった。
「そんなこと言ったら、あなたのことを想って身を引いた愛望先輩に、申し訳が立たないわよ?」
 コードックが微妙な表情になった。
 その時。
「こらあ、キララー! 早く、わらわの呪いを解く魔法を見つけるのだー!」
「だからね、なかなか難しいんだってば! でも、かわいいから、そのままでもいいと思うわよ?」
「わらわは、本当は、ナイスバデーの、お色気むんむんの、すてきなおねいさんなのだー!」
 カーナ・シー・エンパイア皇女のティア・ドロップ、そして、ファン・タ・シー・キングダム王女、キララだった。二人を見て、コードックが言った。
「あの皇女、何年経っても成長しないと思ったら、呪われてたそうだな」
「ええ。昔、うっかりブラック・ダイヤモンドに触れてしまって以来、ああなってしまったそうよ。ブラック・ダイヤモンドが消滅した今、根本的な魔法公式がわからないから、解呪が難航しているみたい」
 キララがこっちに向いた。
「エミィ、お母様が来て欲しいって。西の居留区にいる、ムーナ・シー・ハイランドの難民の一部を受け入れるための区画の調整について、お話を聞きたいって」
「わかりました、王女様」
 ティア・ドロップが、ビシィ!と、コードックを指さす。
「コードック! 必ずや、わらわの『びゅーちー・ぱわー』で、お前をメロメロずっきゅんにしてやるのだ!」
 そして、キララとティア・ドロップは賑やかなやりとりをしながら去って行った。
 ややおいて。
「会いたいんじゃないか、あの連中に?」
「そうね。でも、ここと人間界じゃ、時間の流れが違うから」
「一定してないんだったな」
「ええ。人間界が希望に満ちれば、時間の流れは近づいて、希望が失われれば、人間界の時間の流れは、とてもはやいものになる。だから、今、あの子たち、私よりも、大人になってると思う」
「……同い年じゃない訳か……」
「ええ。でもそのうち、きっと同じ時間を過ごせるようになるわ。きっと、……きっとね!」
 エミィは青空を見上げた。ペンダントのアクアマリンが、光り輝くのを感じた。


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