朝から、なんだか、落ち着かない。 夢華は日課の早朝散歩もそこそこに、家に帰り、エミィに電話した。 しかし、出なかったので、失礼とは思いながら、愛望に電話する。 『どうしたの、夢ちゃん?』 「愛望先輩、なにか、胸騒ぎ、しませんか?」 『胸騒ぎ? ……特に。何かあった、夢ちゃん?』 「……いえ、なんでもないです。失礼しました」 そのあと、友希、祈璃にもかけたが、二人とも特に何かを感じているという訳ではないようだった。 夢華は、不安な気持ちを抑えられず、朝食後、すぐに出かけた。足が向くまま歩いていると。 「……学校……」 夢の木中学校に着いていた。
「……なあ、なぜ、私はここにいて、お前が果物の皮をむいているのだ、コードック?」 「仕方ないだろ、お前はまだ満足に動けない、ここの医師は、今日は診療がある。お前は、不審人物だから、あの医院のベッドに置いておくことは出来ない」 ココは布団から体を起こす。肩を回す。呼吸を繰り返し、自分の体に意識を巡らせる。絶好調までは行かないが、かなり回復しているのは実感出来た。 「私なら、もう大丈夫だ」 「そうか。それなら」 と、コードックが部屋のカーテンを開け、窓を開ける。 「戦えるな?」 「……はあ?」 「一宿一飯の義理は、果たせ」 その時、ココは感じた。 「……まさか……!」
地響きが、早朝の夢の木市に轟く。人々が何事か、と、それぞれが外を見る。そこに、黒い巨体がいた。 巨体が吠えた。 『オサキ・マックラァァァァァァァァ!!』 そして、口から、闇を吐く。闇が着弾したところから、別の何かが吠えた。 『ゼツボォォォォォォォォォグ・アルノミィィィィィィィィィ!』 白い体に甲冑をまとった怪物が現れた。
「……あんなにゼツボーグが……」 夢の木中学校は、ちょっとした高台にある。そこから、町を見ると、黒い巨体を中心として、いくつものゼツボーグが出現しているのだ。 一体、何が、と思っていたら。 「夢華ーっ!」 エミィがかけてきた。 「ゴメン! 今朝は朝食当番だったから、あとで、携帯、確認したの!」 そして、町を見る。 夢華は聞いた。 「どうして、こんなことに……!」 「わからない! 女王様と通信出来ないの! 今、王女様が通信を試みてくれてるけど、スクエアミラーがないから、あのページだけじゃあ難しいみたい……!」 しばらくして、愛望、友希、祈璃も駆けつけた。 「みんな!」 夢華の声に、愛望が応えた。 「やっぱりここだったのね」 「え? 何を言ってるんですか?」 友希が言った。 「なんか、ここに来たら、みんなと会えるような気がしたんです」 祈璃がうなずいた。 皆、ここに引き寄せられた、ということか? ということは、ここに何かがある……? そう思い、夢華は辺りを見渡した。 祈璃が言った。 「○リキュアに変身出来たら……!」 友希が言う。 「考えたくないけど、賢さんたちに、何か、あったんでしょうか?」 一同の中に不安が膨れ上がっていく。その時。 「……あ」 グラウンド上空で、何かが見える。 「あれは……!」 夢華はゲートをよじ登って越え、そこへ走る。みんなの声がしたが、無視して走る。そこにあったのは。 「レインボー・ダイヤモンド……!」 三、四メートル上空でゆっくりと回転する、レインボー・ダイヤモンドがあった。 これがあれば、変身出来る! そう思って、夢華は手を伸ばす。すると、レインボー・ダイヤモンドがゆっくりと降下を始め。 「あと、ちょっと……!」 夢華がつま先立ちになった時。
ピキッ!
甲高い音がして、レインボー・ダイヤモンドに、一筋のヒビが入る。 「……え?」 小さな衝撃が夢華の胸をついた瞬間、次々にヒビが入り、そして。 ガラスが割れるような澄んだ音を立てて、レインボー・ダイヤモンドが粉々になって、砕け散った。欠片は遙か彼方まで飛んでいった。
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