カーナ・シー・エンパイアに侵入する前から異変には気づいていた。 シャーマンが言う。 「闇に覆われている、と言うより、闇そのものになってしまった。そんな感じだわ」 うなずき、パラディンも言った。 「こりゃあ、ブラック・ダイヤモンドに何かがあった、って考えるしかないな。ウィズダム、儀式とか、もうそういう話じゃないんじゃないか?」 「そうね」と、ウィズダムは言った。 「でも、やるだけはやりましょ!」 宮城(きゅうじょう)の上空でうなずき合い、三人は降下した。正面の広場に着地すると。 「ミミックモンスターに、これは……。例の失望の怪物、いや、絶望の怪物、か?」 訳のわからない怪物がウヨウヨとうごめいている。 「じゃあ、掃除しながら、突っ込むぞ!」 パラディンがそう言って剣を輝かせ、斬り込む。その刃の前に、怪物は消えていく。パラディンが切り開いた道を、ウィズダムとシャーマンは駆け、やがて、宮殿に入った。そこでも、怪物がうごめいていた。 こちらから攻撃して消滅させていると、奥の方からも何か「力」が現れて、怪物を消滅させているのがわかった。そして。 パラディンが言った。 「……カーナ・シー・エンパイアの、帝室剣士か?」 剣士がこちらを見て言った。 「貴様らは?」 ウィズダムが代表して答える。 「○リキュア」 「○リキュア? 私が知っているのとは違うようだが?」 シャーマンが答えた。 「昔の○リキュアだから」 「昔の? ……よもや、伝説の○リキュアなどというのではあるまいな?」 と、笑いかけた剣士だが。 「いや、そのエネルギーレベル、あながちデタラメとも思えんな」 ウィズダムが言った。 「この状況、どうなっているのか、説明を求めたいわ」 剣士が言う。 「悪いな、私にもわからぬ。皇帝陛下をお守りするべく、そのお姿をサガしているのだが、ゼツボーグが、邪魔して、思うようにおサガしできぬ。このゼツボーグども、もはや見境なく闇を生んでいるのでな、粛正していたところだ」 ウィズダムが言った。 「そう。ねえ、手を組まない?」 「手を?」 「私たちは、この闇をなんとかしたい、あなたは皇帝をサガしたい。そのためには、お互い、手を組むのが一番だと思うけど?」 しばらくおいて、剣士は答えた。 「おぬしたちを信頼して話す。私には、オサキ・マックラー皇帝ではなく、本当にお仕えするべきお方がある。その方をおサガしし、お守りしたいのだ」 ウィズダムは二人と顔を見合わせる。シャーマンがうなずいて、答えた。 「複雑な事情があるようだけど?」 「そうだ。本当の主(あるじ)を護るためには、カーナ・シー・エンパイアの帝室に忠誠を誓うのが、最も有効なのでな。……正直、ここがこうなってしまっては、皇帝なぞ、もうどうでもよい。我が主をお救い申し上げるのが、私の最優先の大命題だ」 ウィズダムが二人を見る。うなずいて、パラディンが言った。 「あたしがあんたと同行しよう」 「……本気か?」 「ああ。この状況で語ることに、嘘はないからな。あんたの大切な人、サガそう」 剣士が威儀を正して言った。 「私はカーナ・シー・エンパイア帝室……。いや、ムーナ・シー・ハイランド、コマンド・ハイランダー、アキラ・メータ」 パラディンが言った。 「あたしは○ュアパラディン」 「……あの伝説の……!?」 「じゃあ、ウィズダム。あとで必ず追いつく」 「ええ。待ってるわ」 ウィズダムがうなずいた、その時! 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 前方と後方の二ヶ所からゼツボーグが一体ずつ現れた。アキラが剣を構えた時。パラディンが刀の鍔を弓に変形させた。すると、柄頭から矢柄がのび、鳥の翼のような矢羽根が現れた。それをつかむと、光る弦が現れる。パラディンが弓につがえた矢を構えた。 「○リキュア、セイント・アロォォォ!」 パラディンの放った刀身が黄金の輝きを放ち、前方のゼツボーグを金属音とともに貫いたかと思うと、宙で反転し、金属音を響かせて後方のゼツボーグを貫く。 その「矢」がパラディンの元に戻った瞬間、ゼツボーグが粒子となって、消え去った。 そしてパラディンは、なにやらあっけにとられているアキラ・メータとともに、別行動に入った。
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