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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第10回  
 そこにいたのは、全高七メートルの、鎧兜を着けた、ぶっとい円柱。そして、胴にデカデカと「個数限定 さけのりたらこわさびミックスふりかけ」と書いてある。
 誰のどんな絶望か、さっぱりわからない。
 変身した三人はそれぞれに攻撃するが。
 ウィッカが言った。
「やっぱり、通常攻撃が利かない!」
 アーチャーも言った。
「あの体型、力がそらされて、矢が徹らない!」
 クレリックは言った。
「とにかく! 私たちでなんとかするわよ!」
『ゼツボォォォォォォォォォグ!』
 ゼツボーグの口……フタがパッカリと開き、そこから何かの塊が吐き出された。思った以上に射出スピードが速く、ウィッカに激突する。
「かはっ!」
 吐き出された「それ」は、ウィッカの体に命中して破裂し、その体にまとわりつく。
「なに、これ……? ベタベタ湿気てて、身動きとれない……!」
 次々に吐き出され、アーチャー、クレリックを絡め取る。クレリックが見る限り、吐き出された「それ」は、ゴマ、のり、鮭の切り身らしき物体、たらこの塊らしい物体、なんだかよくわからないが緑色の「ツン!」とした刺激のある物体。
 ウィッカが魔法で、「それ」から逃れたが。
『ゼツボォォォォォォォォォグ!』
 再び吐き出された「それ」が、再びウィッカを絡め取る。さらに吐き出し、三人の動きを封じる。
 その時。
「アッハハハハハハ!」
 笑い声がした。その方を見る。
 アーチャーが言った。
「クーキョン!」
 カーナ・シー・エンパイア三幹部の一人、クーキョンが、民家の屋根の上にいた。彼女は、○リキュアたちと同い年ぐらいに見える。
「今日こそ、おしまいね、○リキュア。一人足りないけど、その一人も、すぐに倒して、ア・ゲ・ル」
『ゼツボォォォォォォォォォグ!』
 ゼツボーグが向かってくる。なんとかしなければ、とクレリックが思った時。
「だっりゃああああああああああああああ!!!!!!」
 裂帛の気合いとともに、風が唸り、何かがゼツボーグを蹴り飛ばした。その風の正体は。
 クーキョンが憎々しげに言った。
「……○ュアナイト……!」
 ナイトが、剣を振るい、三人の戒めを解く。
 クレリックは言った。
「ありがとう、ナイト! ……ねえ、約束の方は……?」
 ゼツボーグが向かってきた。
『ゼツボォォォォォォォォォグ!』
 ナイトが振り向きざま、気合いとともに剣でゼツボーグを殴り上げた。
「ゼツボーグが、ナンボのモンだーッ!!」
『ゼツボッッ!?』
 きりもみを描いて、ゼツボーグがはるか上空に飛ばされ、やがて墜落する。
「希望の星をサガしてっ!」
 ナイトが吠える。
「は、はい!」
 その気迫に押され、アーチャーがホープ・ジュエルでゼツボーグを見る。
「あった、希望の星! なんか、四角い袋みたい。……? なんか、書いてある……」
 そしてアーチャーが、書いてあるという文字を読む。
「乾……燥、剤……」
 ウィッカ、クレリック、アーチャーが顔を見合わせ、微妙な表情になる。アーチャーがボソッと「まさか湿気て食べられなくなったから、絶望した、なんていうんじゃ……」と呟いた。
 その時、ナイトが吠えた。
「我ら、いざ、夢を護らんン!!!!」
 その気迫に驚いたように、クレリックの杖とウィッカのステッキが繋がり、それにアーチャーの弓が合体する。そして、ナイトの剣が先端に繋がると同時に、弓が白い翼になった。
 四人が宣言する。
「希望の光を取り戻せ! ○リキュア・フェニックス・スピアー!」
 宙に浮いた翼を持つ槍が一直線に飛び、ゼツボーグの乾燥剤袋を貫く。
『シ・リ・○・ゲ・ルゥゥゥゥゥゥゥゥ!』
 ゼツボーグが絶叫する。これまでにないことだった。
 数瞬おいて、ゼツボーグが爆散する。
「夢と希望を、その胸に! ドント・ギブアップ・ヨア・ドリィィィィィィィム!」
 一瞬おいて。
「ゲプッ!!」
 ナイトがゲップした。
 三人が訝しげにナイトを見る中、いつの間にか、クーキョンは姿を消した。


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