そこにいたのは、全高七メートルの、鎧兜を着けた、ぶっとい円柱。そして、胴にデカデカと「個数限定 さけのりたらこわさびミックスふりかけ」と書いてある。 誰のどんな絶望か、さっぱりわからない。 変身した三人はそれぞれに攻撃するが。 ウィッカが言った。 「やっぱり、通常攻撃が利かない!」 アーチャーも言った。 「あの体型、力がそらされて、矢が徹らない!」 クレリックは言った。 「とにかく! 私たちでなんとかするわよ!」 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 ゼツボーグの口……フタがパッカリと開き、そこから何かの塊が吐き出された。思った以上に射出スピードが速く、ウィッカに激突する。 「かはっ!」 吐き出された「それ」は、ウィッカの体に命中して破裂し、その体にまとわりつく。 「なに、これ……? ベタベタ湿気てて、身動きとれない……!」 次々に吐き出され、アーチャー、クレリックを絡め取る。クレリックが見る限り、吐き出された「それ」は、ゴマ、のり、鮭の切り身らしき物体、たらこの塊らしい物体、なんだかよくわからないが緑色の「ツン!」とした刺激のある物体。 ウィッカが魔法で、「それ」から逃れたが。 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 再び吐き出された「それ」が、再びウィッカを絡め取る。さらに吐き出し、三人の動きを封じる。 その時。 「アッハハハハハハ!」 笑い声がした。その方を見る。 アーチャーが言った。 「クーキョン!」 カーナ・シー・エンパイア三幹部の一人、クーキョンが、民家の屋根の上にいた。彼女は、○リキュアたちと同い年ぐらいに見える。 「今日こそ、おしまいね、○リキュア。一人足りないけど、その一人も、すぐに倒して、ア・ゲ・ル」 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 ゼツボーグが向かってくる。なんとかしなければ、とクレリックが思った時。 「だっりゃああああああああああああああ!!!!!!」 裂帛の気合いとともに、風が唸り、何かがゼツボーグを蹴り飛ばした。その風の正体は。 クーキョンが憎々しげに言った。 「……○ュアナイト……!」 ナイトが、剣を振るい、三人の戒めを解く。 クレリックは言った。 「ありがとう、ナイト! ……ねえ、約束の方は……?」 ゼツボーグが向かってきた。 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 ナイトが振り向きざま、気合いとともに剣でゼツボーグを殴り上げた。 「ゼツボーグが、ナンボのモンだーッ!!」 『ゼツボッッ!?』 きりもみを描いて、ゼツボーグがはるか上空に飛ばされ、やがて墜落する。 「希望の星をサガしてっ!」 ナイトが吠える。 「は、はい!」 その気迫に押され、アーチャーがホープ・ジュエルでゼツボーグを見る。 「あった、希望の星! なんか、四角い袋みたい。……? なんか、書いてある……」 そしてアーチャーが、書いてあるという文字を読む。 「乾……燥、剤……」 ウィッカ、クレリック、アーチャーが顔を見合わせ、微妙な表情になる。アーチャーがボソッと「まさか湿気て食べられなくなったから、絶望した、なんていうんじゃ……」と呟いた。 その時、ナイトが吠えた。 「我ら、いざ、夢を護らんン!!!!」 その気迫に驚いたように、クレリックの杖とウィッカのステッキが繋がり、それにアーチャーの弓が合体する。そして、ナイトの剣が先端に繋がると同時に、弓が白い翼になった。 四人が宣言する。 「希望の光を取り戻せ! ○リキュア・フェニックス・スピアー!」 宙に浮いた翼を持つ槍が一直線に飛び、ゼツボーグの乾燥剤袋を貫く。 『シ・リ・○・ゲ・ルゥゥゥゥゥゥゥゥ!』 ゼツボーグが絶叫する。これまでにないことだった。 数瞬おいて、ゼツボーグが爆散する。 「夢と希望を、その胸に! ドント・ギブアップ・ヨア・ドリィィィィィィィム!」 一瞬おいて。 「ゲプッ!!」 ナイトがゲップした。 三人が訝しげにナイトを見る中、いつの間にか、クーキョンは姿を消した。
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