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| 最近の夢華の日課は、早朝の散歩だ。もともとはある出来事から始めたジョギングが、長続きしないだろう、ということから、散歩にかえたところ、意外と長続きしているということなのだ。 夏休みに入って、朝の爽やかさから、つい海水浴場まで足を伸ばすようになった。
 今日は土曜日。いつものように、浜辺に来て、軽くストレッチをしていた時。
 「……あれは……」
 つい一昨日も、似たようなものを見た気がする。そこまで駆け寄ると。
 「宝箱だ……!」
 色はピンク、縦十五センチ、横二十五センチ、高さ、十五センチ程度だろうか。アーチ状のふたがある。デザインは、あの宝箱と同じだ。
 「どうしよう、私じゃ、チェックできない」
 ジャージーのポケットから、スマホを出す。
 午前六時十分。エミィは起きているだろうか?
 迷惑だろうが、緊急事態だ、申し訳なさとともにうなずき、夢華はエミィに電話する。五コール後。
 『うきゅ?』
 「……くっはぁぁぁぁぁぁぁ〜……」
 ウッキューが出た。脱力感とともに、夢華は言った。
 「あのね、ウッキュー、エミィにかわってくれる?」
 「うっきゅー!」
 そして、こんなやりとりが聞こえてきた。
 『うっきゅー!』
 『う〜ん』
 『うっきゅー!』
 『……ああ、片栗粉は最初から入れるのが、コツなんだって』
 『うっきゅー!』
 『……教頭先生の奥さんは旅行じゃなくて、先生の浮気に怒って実家に帰ったって言ってるでしょ……』
 『うっきゅー!』
 『……夢華が三キロも太っちゃったのは、知ってるってば……』
 「ぅおおおぉぉぉぉおいいぃぃい! 起きろぉぉぉぉぉ!!」
 夢華が絶叫した。
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