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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第93回   FINAL CASE・2
 そう思っていたら、携帯が鳴った。刑事課長からだ、。
「どうしましたか?」
 問うてみると、刑事課長はこちらの状況・様子を聞いてから、言った。少しばかりの間を置いて。まるで、この先をためらうかのような「間」だった
『雉谷造船船舶管理株式会社の臼井社長が、何者かに殺害された』
「……え? なんですか、それは?」
 ここで、別の事件。正直、手一杯だ。そんな不満が出そうになったが、それをこらえ、鳴嶋は聞いた。
「殺人で間違いなんですね?」
 事故の可能性があるなら、それも考慮した方がいい。
『後頭部に鈍器で殴ったような跡がある。凶器はまだ見つかってないが。……それで、だな』
 と、刑事課長は驚くべきことを言った。
『臼井社長は九時四十五分頃に「ちょっと出てくる」と言って出かけたそうだ。今日の十一時に、「いぬいクルーズ」で、運輸安全委員会の聴聞があるから、十時二十分には戻って欲しいと伝えたそうだが、時間になっても帰ってこず、携帯電話にかけても応答がない。ところが、その後、そこから車で二十分ほど先にある、解体予定の廃ビルで、臼井社長の撲殺死体が発見された。発見したのは、警邏(けいら)中の交番勤務の巡査。何者かが走り去るのを見て不審に思い、廃ビルに立ち入ったところ、臼井社長の死体を見つけたということだ。所持していた免許証から身元がわかり、美台署(うち)に通報してきた』
 雉谷造船といえば、乾ホールディングスの傘下にある企業だ。その性質上、雉谷造船で建造された船舶が「いぬいクルーズ」で運用されているという。
 なにか関連があるのか?
『その廃ビルだが、そちら……「いぬいクルーズ」からも、車で十分程度のところにある。これは、確定情報ではないんだが。今回の沈没事故、何らかの不正があったらしい』
「不正?」
『ああ。それが何かはわからん。雉谷の社員も、現時点で話を聞けてる限り、よくわからないらしくてな。ただ、もし不正があったとすると……』
 この先、というか課長の考えがわかった。課長は「その『不正』にからんで、乾社長と臼井社長との間で、何らかのトラブルがあったのでは」と考えているのだ。それはつまり。
「……緊急配備を敷きましょう」
『わかった。県警本部の方には私から連絡する』
 電話を切り、鳴嶋は笠井巡査ほか、同行させた刑事たちに言った。
「緊急配備を敷く! 乾武繁の身柄確保に全力を傾注!」
 笠井が首を傾げる。
「鳴嶋さん、今の電話、何だったんですか?」
「道々、説明する。まずは乾社長の立ち回り先を当たる!」
 笠井が言った。
「え、と。自宅、別宅、あと、隣の県にある大学に通う息子がいますから、その息子の住所地……砂鞠矢市にも行く可能性があるかも」
「よし! 二班(ふたはん)に分かれて、まず自宅と別宅を当たる!」
 鳴嶋の指示に、一同が頷く。


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