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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第79回   CASE10−5・5
 管理施設そばの防犯灯の明かりで、鮎見がそれを読む。
『花の色は、移りにけりな、いたづらに、我が身世にふる、ながめせしまに。……私は失意のどん底にあった。苦しかった。だが、私は諦めてはいなかった! 考えに考えた! そして、今、儲け話にありつくことが出来た。そうだ、あの因縁の町で儲けてやろう。私の残した財産で、今は釣り場などをやっている。許せん!』
 それを聞いた俺は、頷いて言った。
「決まり、だな」
 璃依も頷いた。
 その時、湖から金色の光が溢れてくるのが見えた。だが、確かに神々しいっていうのとは、ほど遠い。しいて言うなら。
 恵磨さんが苦い顔で言った。
「なんか、『成金趣味が、金ピカのアクセで飾り立ててる』みたい。ていうか、そんな『ニオイ』が、プンプンするわ。吐き気がする」
 確かに。
 俺がガントレットを装着すると、ボコボコという、泡(バブル)が立つような音とともに湖から何かが現れた。そいつは、遠目に見てもわかる。全長が五、六メーターはあるだろうか。確かに、ワニっぽいところのある巨大魚だ。
「レヴィヤタンか。だとすると、困ったな」
 資料によると、レヴィヤタンを倒せるのは神のみらしい。次元断裂剣とか、次元貫通銃とかで、どうにか出来るかな?
 まあ、警察が動いてるっていうから、今回の詐欺事件、解決できるんだろうけど、下手すると、お金が返ってこない怖れもある。ここで潰すことで、早期解決できるなら!
 そんなことを考えていると、恵磨さんが言った。
「なんか、アリゲーターガーみたい」
「え? ありげ……? 恵磨さん、それ、何?」
 俺が聞くと、恵磨さんが答えた。
「アリゲーターガー。そういう淡水魚がいるの」
「お姉ちゃん、詳しいね?」
「貝田(かいだ)さんがね、最近、凝ってるのよ、釣りに。で、話の中に出てきたの。ワニみたいな頭部を持った、デッカい魚だって」
 貝田さんていうのは、この町での俺たちの知り合いで、電気工務店やってる人だ。
 それはともかく。
 アリゲーターガー、淡水魚か……。
 俺はスマホを操作し、いろいろとチェックする。そして。
「オフショアロッドに、トリプルフック。エサは鮭のぶつ切り、と」
 スマホをガントレットにセットすると、手に釣り竿が現れた。反対の手には、白く光るブロック。これが「鮭の切り身」だ。俺は、それを、気合いとともに怪魚めがけて投げつける。すると、すぐに食いついてきた。なんか「儲けの種を見付けたら、見境なく食いつく」感じがする。その貪欲さに俺も吐き気を感じたが、とにかくこいつをこちらまで引き寄せる!
 針に食いついてからは、しばらく力の応酬だった。相手はかなり強い力でこちらに抵抗する。俺も、恵磨さんや鮎見の協力を得ながら、こちらに引く。重いっていうかなんていうか、俺との間に壁みたいなものがあって、そこに引っかかってる感じがする。やっぱり釣り場の敷地内に入らないと駄目なんだろうか?
 とにかく、璃依の攻撃可能圏内にまで引っ張らないと!
 俺は歯を食いしばり、全身に力を込めて、釣り竿を引いた。脚を踏ん張りながら、少しずつ、柵から離れる。徐々にだが、こちらに引き寄せているのを感じた。
 そして、裂帛の気合いとともに、俺は竿を引き寄せた。同時に、璃依の気合いも、上空から聞こえた。あいつ、柵の上に跳び乗り、さらに管理施設傍の防犯灯のてっぺんに跳び乗ってたんだ。そこから、気合いもろとも、防犯灯の柱を蹴り、その勢いを利用して宙でトンボを切り、右の手刀にアクアマリンの光をまとわせて、怪魚の首を刈り落とした!
 そのまま地上に着地すると、まるで爆撃でも起きたかのように、コンクリの地面が砕ける音と同時に、土煙がもうもうと立ち上って。煙が晴れると、そこに璃依がこっちを向いて立ってて、ブレスレット・アンクレットのインジケーターがアクアマリンに輝いてた。そして、その背後でスローモーションで落下してきたアリゲーターガーの幻体が、派手に爆発し、コインやら札束みたいな形の、無数の金色の光を振りまいた。
「璃依」
「なに、太牙?」
「お前さ、女子アナじゃなくて、特撮ヒロイン目指せ。その方が似合ってるから」
「……うっさいわ!」

 翌日。
 警察の方の捜査で進展があったらしい。開発話は詐欺確定、ってことで、話を持ちかけてきた会社に家宅捜索が入り、関係者が全員、逮捕された。残念ながら、お金は全額戻っては来ないそうだけど、それでもこの手の詐欺事件としては、異例といってもいいぐらいの金額が戻ってくるらしい。
 それが俺たちの活躍と関係があるのかどうか。
 それは神のみぞ、知るところである。

 ちなみに。
 例の釣り場のコンクリの地面が砕けた件については、恵磨さんが話をつけるから大丈夫ってことだったが。

 ……本当に大丈夫か?


(CASE10−5・了)


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