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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第77回   CASE10−5・3
「気になる話?」
「ああ。今年の、ゴールデンウィークを過ぎた辺りから出てきた話らしいんだがな。町に来た外部の人が、夜中に例の湖に行ったらしいんだ。なんで、そんなことをしたのか、よくわかんないけど」
「産業廃棄物を、不法投棄できそうな場所を探してたらしいよ?」
 と、璃依が言ったのは、とりあえずスルーして、俺は続けた。
「その人、湖から金色の光が溢れているのを見たらしい。あまりにも不思議な光景だったが、神々しいとか、神秘的とか、そういう感じはなくて、ただただ怖かったらしいんだ。そして、その光る湖から、何ものかが現れ、空を舞ったっていう」
 話を聞き終え、鮎見がうさんくさそうに言った。
「与太話もいいところだわ」
「だろうなあ」と答えてから俺は言った。
「でもさ、恵磨さん……璃依のお姉さんが、その人から直接、話を聞いてるんだ。朝方、湖から下って、町道に合流するところで、自動車で縁石に乗り上げて、金網、突き破って、川に落ちそうになってるところを保護されて、駐在さんに訳わかんない話をしてるんで、恵磨さんが呼ばれて」
「で、お姉ちゃんが話をまとめたら、『湖から出てきた、ワニの頭をした、巨大な魚が空を舞ってた』ってことらしいわ」
 鮎見がちょっと考える。そして。
「まるで『レヴィヤタン』ね」
 俺と璃依の声がハモる。
「レヴィヤタン?」
「ええ。聖書に登場する怪魚。一説にワニの姿をしていた、ともいわれてるわ」
 俺は、スマホを出して、検索してみた。いくつかサイトを見てみる。生憎「ワニの姿」なんていう記述には当たらなかったが、ちょっと気になる記事を見付け、俺はしばらく読んだ。
「……どうしたの、太牙?」
 璃依の声に我に返ると、俺はそれに適当に答え、言った。
「いや、なんでも。……どうだ、鮎見。俺たちで、正体突き止めないか?」
「はあ? 何言ってんの、宇津くん?」
 鮎見が眉をしかめたが、俺は構わず言った。
「恵磨さんも、気にすることはないって言ってたし、実際に、美台みたいに昏睡者が出てるわけでもない。でもさ……」
 と、俺はスマホの画面を見せながら「気になってること」を言った。
 しばらくおいて、鮎見が言った。
「気にしすぎじゃないかしら?」
 璃依も「考えすぎだと思うなあ」とか言ったが。
「でも、気にならないか?」
 と、俺は気になることの根拠を言った……。

「無理ね。やっぱり深夜の方がいいわ。出来たら、レヴィヤタンが出てきたタイミングで読んだ方がいい」
 そうか。まあ、そうじゃないか、とは薄々、予想してたんだが。
 璃依が言った。
「じゃあ、今夜、来てみよっか?」
「でもさ。俺やお前の家からだったら、チャリンコで、十分もあればここまで来られるが、鮎見が泊まってる旅館からだと、バスでないと、ちょい、キツいぞ?」
 鮎見が泊まってる旅館は、町の、割と中心にある。一方、この湖は町の北西。西にある町との境だ。一応、三十分ぐらいあったら、来られなくはないが、鮎見はここには初めて来たから道がわからないだろう。バスで移動した方が確実だが。
「夜中だから、バスは、ないしな」
「迎えに行こうか?」
「いや、そもそも旅館の表玄関、閉まってるし」
「それじゃあさ」
 と、璃依が何かいいことを思いついたように、言った。
「うちに泊まったらいいよ!」
 鮎見がギョッとなる。
「あのねえ、いきなり『泊まれ』って言われても、ご家族の方が困るでしょう?」
「それなら、大丈夫! 今日、お父さんは出張だし、おばあちゃんは、温泉旅行に行ってて、あたしとお姉ちゃんと、お母さんしかいないから!」
 そう言って、璃依はスマホを出し、恵磨さんに電話をかけた。その返答は。
「着替えだけ、持ってきてくれたらいいから」
 というわけで、鮎見は、今夜は璃依の家に泊まることになった。


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