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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第7回   CASE1・7
 これが俺の特殊能力だ。俺は自分の生体エネルギーを実体化させることが出来る。ただ、それに方向性を与えるのがあまり得意じゃなかった。そんなある日、兄弟子……っていうか女の人だから、姉弟子?……からこんなことを言われたんだ。
「ねえ、好きな漫画とか音楽を利用したら、うまくイメージを乗せられて、実体化させられるんじゃないかな?」
 そこから試行錯誤の末、師匠の知り合いに、このガントレットを作ってもらった。実体化させるのに、「電気が役に立つ」ってことで、その電源として電池とか、家電製品とか、スマホのバッテリーとかを利用する回路が組み込んであるっていう。
 俺は剣を構える。そして、ガントレットにある、菱形四角錐のインジケーターを見た。
 緑色に輝いている。この剣は俺の生体エネルギー。だから、長時間、実体化させてると、俺の方が衰弱でダウンしちまう。そうならないように、このインジケーターがある。今は緑色だが、一分三十秒経つと点滅を始め信号音が鳴る。二分目からオレンジ色の点滅に変わって、危機感を感じるような音に変わる。
 三分経つと、インジケーターから光が消え、実体化していたものも消える。今の俺では、コンスタントに全力を発揮できるのは三分間だ、っていう判断らしい。
 ウ○トラマンみてえ。
 俺はダッシュし、ジョロウグモに斬りかかった。だが、器用に背後にジャンプし、それをかわすと、ジョロウグモは、俺を迂回するコースを取って、時計塔に向けて、走り出した。
「璃依!」
 俺の指示に、背後で璃依が走る気配がする。そして気合いとともに、璃依がジョロウグモに跳び蹴りを食らわせた。それを受け、ひるんだのか、ジョロウグモが俺たちと距離を取る。俺のそばに来た璃依が拳を構える。
 璃依の両手首にはブレスレット、両足首にはアンクレットがあり、それについてるハート型のインジケーターはアクアマリンに光っている。
 俺と璃依は同門の弟子。で、こいつは自分の生体エネルギーを拳や足に乗せて、物理体・非物理体にダメージを与えることが出来る。ただし、こいつも俺と同じで、あまり長い時間はそういうことができない。だからそれを制御するためにブレスレット・アンクレットを装着している。スイッチを入れることで電気刺激が起こり、アイテムを装着していない時よりもはるかに大きな力が出せるかわりに、時間制限がつく。こいつの場合は二分四十秒だ。
 璃依が小声で言った。
「あたしが突っ込む。ヤツが右手に行くように突っ込むから」
「わかった」
 俺は剣先を地に向ける。元が俺の生体エネルギーだから、剣の重さなんてものはない。さらに実体化とはいっても、物質との干渉率は、思ったほど高くない。ただ俺の中に「先入観」があり、その影響はどうしても受けてしまう。この場合、「上段に構えると、振り下ろしたあと、剣の重さに引きずられて、二の太刀が打てない」っていうのが俺の中にある。
 だから、下に構えて上に振り上げれば、その返す刀で振り下ろせて二の太刀が打てるっていう「思い込み」を利用する。
 璃依がジョロウグモの懐に踏み込んだ。そして、左の正拳突きを放つ。それをかわし、体(たい)をかわしたクモに、さらに左の中段蹴りを放つ。それに追われるようにして、ジョロウグモは左に軸線をずらし、そのままサイドステップの要領で左……つまり向かって右手側に移動した。
 それを予期していた俺が、クモが動くと同時に踏み込む。そして、気合いもろとも剣を振り上げ、ヤツの左側の脚の付け根を斬った!
 芸術的と言ってもいいぐらいの体捌きでかわそうとしたジョロウグモだったが、この剣は「次元断裂剣」。次元の壁を斬り裂く力がある……という設定がある。それを応用し、直接斬りつけなくても、その対象が存在する空間の周辺を斬り裂くことが出来る。
 左側の脚が三本、剣が振れてもいないのに、斬り飛ばされる。クモについている女の顔が歪み、絶叫した。
 前もってどこに来るかわかっていたからな、念を集中してこの技が使えるようにしておいた。
 その時、志勇吾の声がした。
「腹が急所だ!」
 志勇吾がかけたゴーグルの、眉間のあたりで紫色のスペードマークが光っていた。そうか、あいつも力を全開にしたか。
 ちなみに、このアイテムは俺のガントレットを見た志勇吾が「短時間でも全力以上が出せるんなら、試してみたい」とか言ったんで、志勇吾の師匠から俺の師匠に連絡が行って、そこから改造、となったものだ。


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