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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第63回   CASE8・5
「おおーい、ゾディアック! いるんだろ? 君の力が借りたいんだ!」
「え? 来てんのか、あいつ?」
 俺がそう言うと、鮎見が気がついたように言った。
「ああ、そうか、『自動発動』とか言ってたわね。もしかして、私たちが来るとか、ここで『七不思議』が実体化すると、ここに来るようになってるのかも?」
 璃依も「そうか」なんて、言ってる。
 しかし、奴が現れる気配はない。ひょっとしたら、他の条件でもあるのか?
 仕方ねえ。やむを得ないが、ここは消滅させるか。昏睡状態の生徒のためだ。
 俺がスマホで武器を出そうとしたときだ。
「待ってくれ、太牙」
 志勇吾が言った。
「どした?」
 しばらく何かを考え、志勇吾は言った。
「ちょっと試したいことがあるんだ」
 試したいこと?
 なんだろう?
 そう思っていると、志勇吾はゴーグルを着ける。そして、校舎の方を見た。やがて。
『懲りない人たちねえ』
 と、電子的な残響音の声がした。その方を見ると、そこにいたのは。
「やっぱり来たか……」
 ゴーグルを外した志勇吾が言った。
 俺たちが疑問を口にするより早く志勇吾が言った。
「頼む。力を貸して欲しい」
 ゾディアックは表情を動かさない。なんか、わかんないところで、事態が勝手に動いてる感があって、気持ちのいいものじゃねえけど、今は見守るしかねえ。
『どうして、私があなたたちに協力しないとならないの?』
「君なら、そうしてくれる、と思ったからだ」
『あのね、私、あなたたちの仲間でも何でもないし? そもそも、敵じゃないとは言ってないわよ? 今、この瞬間にも、あなたたちに攻撃を仕掛けないという保証は、どこにもないんだから』
「確かにそうだ」
 と言ってから、志勇吾は確信の光を込めた瞳で言った。
「でも、君は、必ず俺たちの力になってくれると思う。君はそういう人だから」
 ……。
 なに言ってんだ、志勇吾の奴? 俺は思わず璃依を見たが、璃依は首を横に振るだけ。鮎見も肩をすくめてる。
 しばらくして。
『あなたが、そう言うなら……』
 どこか、照れたような口調で、ゾディアックが言った。
「なあ、璃依」
「何?」
「何が起きてるんだ、一体?」
「……わかるわけないじゃん。でも、しいて言うなら」
「言うなら?」
 俺は璃依を見た。
「もしかしたら、春瀬くん、ゾディアックの正体、知ってるのかも知れない」
 そういえば。
 この間、ボルダリングの影の一件解決でゾディアックが帰って、また現れた時、志勇吾の奴、ゴーグルかけた状態だったな、リミッター解除して。その状態でゾディアックを視たとしたら?

 そのあと、志勇吾の提案でゾディアックが「双子座」を出現させた。その片方を白い影に被せ、片方を白い影の前に立たせた。そして璃依がブレスレットとアンクレット、鮎見のチョーカーを利用して「司会者」になり、白い影に「独演会」をやらせた。正直、これで無念の解消にはならないと思う。事実、これまでのように、白い影が光の粒になって空に吸い込まれる、っていうラスト、迎えなかったしな。でも、影は空気にかすむように消えていった。鮎見が札を引くと、「今はただ 思ひ絶えなむとばかりを 人づてならで いふよしもがな」の逆が出た。
 鮎見によると、「自分は決して諦めない」みたいなことになるらしいから、また出現するのは間違いないが、今回のところは消える、ということのようだ。昏睡状態になった生徒たち、衰弱してねえといいけどな。

 ちなみに、あとでわかったこと。
 今田先輩は保護者を交えた進路相談の時に、家族関係についても、いろいろと話していたそうだ。それが記録されてて、猿橋はそれを読んだとのことだった。

(CASE8・了)


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