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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第6回   CASE1・6
 俺たちは周囲を確認する。俺たち以外に、時計塔のあたりには人影はない。逆回転を確認しようという、不心得な生徒も、来ていない。ていうか、そういうヤツが来ないように、ここにはある種の「結界」があるんだ。真条さんはその手の術を心得ていて、施術してくれた。前の事件の時も、そうだ。
 そろそろ十二時になろうか、って時だった。
「……!?」
 何か、異様なモノが、時計塔の周りを駆け巡る気配があった。俺は、志勇吾を見る。
 頷き、志勇吾はブレザーの内ポケットから、白いゴーグルを出した。このゴーグル、目の前に来る部分も、白い板になってる。ただし、そこには、黒と赤の線で、なにやら幾何学模様が刻んである。
 こいつは「視る」能力に秀でている。もっとも、視るだけなら、ここにいる全員が出来る。志勇吾は視るだけじゃなく、対象の情報を、ある階層(レベル)まで読み解くことが出来るんだ。
 ただ、普段からそういうことができると、精神に相当な負担がかかる。だから、修行で「特製ゴーグルをかけたときに、その力が発動する」ようにした。意識の切り替えだけで力のスイッチをオンオフできるほどのレベルには、まだ志勇吾は到達できてないそうだ。
 しばらく辺りを見ていた志勇吾だが。
「……ジョロウグモ」
 一言、そう言った。
 気配のする方を見た俺と璃依、鮎見は納得した。そこには、人間の三倍はある、極彩色のジョロウグモがいたのだ! ただし、その頭部は若い女の顔になってる。
 引き続き、志勇吾が言った。
「五年前、校則違反、除籍、女子生徒……」
 とりあえず見えている情報を口にしているようだ。だが、弱点とか、もっと詳しい情報まではアクセスできていないらしい。
 その時、金属が打ち合うような、甲高い音が響いた。鮎見が時計を見上げる。
「始まったわ」
 その言葉を受けて、璃依が言った。
「ジョロウグモから『糸』が出てる。……そうか、あの『糸』使って、時計の針を巻き戻してんのね」
 俺は、ブレザーを脱ぎ捨てた。右腕の前腕部には、腕にフィットする装甲……いわゆる籠手(ガントレット)が装着してある。
 そして、ポケットからスマホを出し、中の保存映像を呼び出す。そこにあるのは、剣の映像。ただし、ただの剣じゃねえ。俺の愛読書……人気コミック「D・B〜ディメンション・ブレイカーズ」で、主人公が使う「次元断裂剣」だ。画面をタップし、その剣の情報をダウンロードする。もちろん、配布元はそのコミックの公式サイトで、落とすデータはコミック内の設定だ。読み込み中の画面になったのを確認し、俺はスマホをガントレットにセットする。静電気みたいな感覚が右腕に走った次の瞬間、俺の右手に「次元断裂剣」が現れた。


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