20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第47回   CASE6・2
 月曜日はゆううつだが、今日は格別だ。
 結局「夕方、体育館の西側の壁に浮かび上がる、ボクシングの試合」の件については、本当の意味で解決できたとはいえず、おまけに回復した生徒たちも、五人のうち二人ほどは衰弱の度合いが大きく、今週中の復帰は無理そうだ、ってことだった。
 今朝、生徒会室で猿橋からその話を聞かされ、俺たちは、落ちこんだわけだ。
 例の「ゾディアック」って名乗った奴のことについては、猿橋も「調べてみよう」とは言ってたが「悪魔」と「精霊」を同列に扱う奴だからな、これについては、俺たちで独自に動こうって事になってる。ていうか、奴に調べる術(すべ)があるとは思えねえ。単なる社交辞令であることは見え見えだ。
 昼休み、天気もいいんで、俺たち四人は屋上で車座になって、昼メシを食ってた。俺はコンビニで買ってきておいた菓子パン、志勇吾は購買で買った総菜パン、璃依は自分で作ってきた弁当で、鮎見は下宿先の伯母さん(鮎見は、こっちに親戚がいる)が作ってくれた弁当だ。
 鮎見が言った。
「ゾディアックっていったら、黄道十二星座の事よね? ケンタウロスは射手座、金色の牛は牡牛座、剣持ってた有翼の女は、乙女座ってところだと思う。で、札は相変わらず、何も答えてはくれなかったわ」
 これについては、土曜日にも、時間作って生徒会室で簡単なミーティングをしたんだが。
 結局、正体どころか目的もわからないんで、様子見ってことになったんだ。
 でも、やっぱり話題にせずにいられない。今後、ゾディアックなる存在が俺たちの障害になるのであれば、その対策をしないとならねえからな。
 そんな話をしていたら、俺たちのところに、一人の男子生徒が近づいてきた。俺と同じクラスの杉沢(すぎさわ)恒之(つねゆき)だった。
「よう、宇津。……と、こりゃあ好都合だな」
 なんだ、好都合、って?
「杉沢、なんだ、『好都合』って?」
 杉沢が、手に持った紙袋(近くのコンビニの奴だ)を開けながら、俺の隣に座る。
「いや、さ。お前たち、よくつるんでるじゃん、部活もクラスも違うのに。で、さ」
 と、袋からサンドイッチを出して、パックを開きながら言った。
「今日、一Bに転校生が来たの、知ってるか?」
「いや、知らねえけど?」
「あたし、知ってるわよ」
 と、璃依が言った。
「磨楠(まぐす)摩穂(まほ)さんよね?」
「璃依、お前、よく知ってるな」
「放送部でね、新聞部と合同で、インタビューしようって話が出てるの」
 インタビュー? 転校生を?
「……なんだ、それ? 転校してきた生徒をインタビューするって、珍獣じゃあるめえし」
 俺がそう言うと、鮎見も志勇吾も頷いてた。
「それがさあ」
 と、璃依は答えた。
「前に住んでたところで、中学三年の時、中学生イングリッシュスピーチコンテスト全国大会で、優勝してるのよ! そんなすごい人が転校してきたら、取材しないわけにはいかないでしょ?」
 ……すげえのが、転校してきたな、そりゃあ。
 杉沢が、サンドイッチを頬張った口でモゴモゴ言った。
「飲み込んでからものを言え」
 俺が突っ込むと、持参したカフェラテのペットボトルのふたをねじ切り、口の中のものを流し込んでから言った。
「その転校生が、どうやら春瀬に興味持ってるみたいなんだよ!」
「……はあ?」
 と、志勇吾が首を傾げる。
 俺、璃依、鮎見の視線が集まる中、志勇吾が聞いた。
「なんだ、それ?」
「一Bに、女子陸上部に入ってる知り合いがいるんだけど。……ちなみに、俺の妹の友だちな」
 と断ってから、杉沢は言った。
「最初は、陸上に興味があるのかって思ったらしいんだが。話聞いてると、どうも、男子陸上部の特定の部員のことを聞いてるらしいんだ。『生徒会長と知り合いらしい』とか、意味不明なことを言ってたらしいんだが、どうやら、春瀬のことを聞いてるらしいってことがわかったそうでな」
「なんで、俺のことって、特定できたんだ?」
 志勇吾の疑問ももっともだ。「生徒会長の知り合い」とか、確かに意味不明なワードもあるが(もっとも、FACELESSのことを知ってるんなら、話は別だが)、志勇吾を特定できる、何があったんだ?
「いや、さ。どこで見かけたのか、本人が曖昧な言い方するんで、よくわからないらしいが、お前たちが一緒にいるところをどこかで見たらしいんだな。『美少女と、メガネでポニテの美少女と一緒だった』ってことで、どうやら、春瀬らしいってことになった。ていうか、俺が指摘したんだけどな!」
 そうか。璃依と鮎見が一緒にいるところを見たのか。確かに、学園以外でも、俺たち、いつの間にか、つるむようになってたからな。
「というわけでさ、春瀬。悪いけど、今日の放課後、二Cの教室に残っててくれないか?」
「いいけど、なんで、お前がそんなことを言いに来たんだ?」
 志勇吾の問いに、杉沢が笑って答えた。
「その娘(こ)な、結構、美少女でさ! 美少女の頼みは、進んで聞け、っていうのが、死んだ爺ちゃんの遺言なんだよ!」
 嘘こけ、この野郎。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1731