20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第35回   CASE4・6
 そう思っていたら、何かを思い出したらしい、真条さんが言った。
「確か……。そう、確か十一年ぐらい前になるかなあ。あたしが美台学園を受験する頃だったんだけど、変な噂があったの」
「噂?」
 と、俺と新田さんが言った。
「うん。その頃、通り魔が出没しててね? 素手で、相手を殴り倒すっていうやつ。で、その犯人、美台学園の生徒じゃないかっていう、変な噂が流れてて、パパとかママが『そんな物騒なところ、受験して大丈夫か』みたいな心配してたわ」
「通り魔……」
 新田さんが呟いてから言う。
「そういえば、そんな話があったような気も……。通り魔といえば、今も、そんな噂が出てますよね?」
 璃依を倒したやつだな。もしかして、なんか関係あるのか? でも、だとしたら、なんで今になって?
 俺がその疑問を口にすると、真条さんが答えた。
「例えば、だけど。その生徒、高校卒業して、武者修行かなんかで海外へ行って、最近になって、帰国した。あるいは、何らかの理由で、最近になって、またそんな衝動が芽生えた」
「衝動?」と、俺は尋ねた。「なんですかね、衝動、って?」。
「うーん。想像だけど。海外じゃなくても、進学や就職なんかでしばらくこの街を離れてて、何らかの理由……例えば人事異動とかでこちらに帰ってきて、昔の感情とかが甦ってきた、とか」
 ……。
 有り得ない話じゃねえ。

 新田さんと別れ、真条さんがBiShopへ帰るとき、俺に言った。イタズラっぽい笑みを浮かべて。
「ねえ、宇津っちゃん。璃依ちゃんとは、どうなってるの?」
「え? 璃依と? 何スか、それ?」
「またまたぁ!」
 と、真条さんが俺を肘で小突く。
「端から見てると、いい雰囲気よ、君たち」
「……そういうんじゃないですよ。俺と璃依、幼稚園からのつきあいなんで、そういうのとか、ないです」
 照れ隠しでも何でもない。本当に、俺と璃依は「そういう」関係じゃない。
「そうかなあ? 気心知れてて、意識しないだけで、まるで長年連れ添った夫婦みたいになってるわよ?」
 そうかなあ?
「そう見えるだけでしょ? 本当に俺たち、幼馴染み以上じゃないですよ?」
 俺がそう言うと、真条さんが「ンフフフ」と、妙な笑いを浮かべて言った。
「なんなら、試してみたら?」
「試す?」
「うん。璃依ちゃんに、なんかプレゼントするの。そうしたら、彼女が実は宇津っちゃんことを『男の子』として見てるのが、わかると思うわよ?」
 ハハァン。この人の意図が読めてきた。
「せっかくですけど、お断りします。俺と璃依、本当に幼馴染み以上じゃないんで!」
 この人、俺になんか買わせて、店の売り上げの足しにしようとしてるな?
「うにゅう〜」
 と、真条さんが口を尖らせた。
 その手に乗るかッ!


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1416