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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第33回   CASE4・4
「何に見える?」
 そこにあったのは、二重丸。中の丸から放射状に線が出てる。俺は率直に言った。
「なんかの花、かな?」
 志勇吾と鮎見は「菊の花」って言ったが、「花」っていうのは、共通してた。
「これはイスラエルで使われているシンボルの一つだ。太陽を表すらしい。しかし、多くの者は『花』と答える」
 太陽か。そう言われれば、そんな風にも見えるな。
「イスラエルで有名な王といえば、ダビデ王だろう。だが、もう一人、いる。……ソロモン王だ」
 鮎見がちょっと考えて言った。
「ソロモン王っていったら、悪魔を使役して、莫大な財宝を持ってて、っていう伝説が……。……あ」
 と、何かに気づいたように、鮎見が猿橋を見た。
 猿橋が頷く。
「ソロモン王の秘宝は、我が国に流れたという伝説がある。つまり」
 と、紙をまた見せた。
「Gフラワー……G(グレート)フラワーだ」
 あ……。なるほど、ソロモン王の秘宝だったのか、乾誠介が手に入れたのは。
「さっきの生け贄の話だが。その被害者……もっとも、すべてが実際に死んだ数ではないが……それをよく見て欲しい」
 計算し、俺は言った。
「えっと。まず、学園創立時に一人、そこから十五年ごとに一人だから……。六人じゃん。それがどうかしたか?」
 その時、鮎見が咳払いした。
「宇津くん、一人忘れてる」
「え?」
「だから。そもそもY資金を手にするときに、一人、生け贄にしてるでしょ? だから、それを足せば、七人……」
 ……………………。
「あーッ!!」
 俺、志勇吾、鮎見の声がハモった。
 猿橋が頷く。
「そう、『七』だ!」
 そうか、不思議が「七」に固定されてるのって……!
「で、でも、ちょっと待って!? 七不思議は随分前からいわれてる! 七人目は七十六年目になるわ! 数の辻褄が……!?」
 猿橋は大げさに首を横に振ってみせる。
「君たちは『契約書』というものを見たことがないのか?」
 恥ずかしながら、見たことない。俺たちの微妙な表情を確認すると、猿橋は言った。
「永年契約、というものもあるが、通常は一年ごと、二年ごとの年次更新だ。だが、その更新が、例えば、九十年単位だったら? 最初の一人目から二人目までが十五年、三人目までが三十年。すると、七人目までで九十年となる」
 だとすると……。
 俺は言った。
「あらかじめ『七人の生け贄を捧げます』って契約したのか」
「おそらく。すると、七十六年目、今から二年前で、いったん契約が切れることになる。そして、それから遡ること一年、つまり今から三年前に、僕の祖父は理事長の座を逐われた。言い換えたら、乾氏が、理事長になった、いや、ならねばならなかった。……ここの実権を握る必要があったんだ。ここのどこかにある『契約書』を更新し、乾コンツェルンを繁栄させるために」
 いろいろ繋がってきた。そして、俺は気がついたことを言った。
「じゃあ、その『ピー・タイ・ホー』も、本当は精霊なんかじゃねえかもな」
 鮎見が息を呑む。
「ソロモン王が使役していた、七十二の悪魔……! ひょっとして、悪魔十体ごとに一人の生け贄、とか? 冗談じゃないわよ!」
 志勇吾が嘆息する。
「勘弁しろよ! そういうのは悪魔祓師(エクソシスト)呼べってーの!」
 猿橋がきょとんとなった。
「同じようなものだろう、精霊だろうと悪魔だろうと?」
 俺たちは一斉に睨んだ。
 こいつは、なんていうか!
 ちょっとだけ鼻白んだようになった感じで、猿橋は言った。
「ま、まあ、何にせよ、『アーク』を探し出せば、全て解決だ。その契約を破棄すれば、全ての問題は解決するからな」
 まあ、そうだけどな。
 納得いかない俺たちを無視して、猿橋はシニカルな笑いを浮かべて言った。
「そう言えば、ソロモンの秘法は、聖櫃(せいひつ)……アークだという説もあったな。皮肉なものだ」
 何にせよ、俺たちもアーク探しに本腰を入れないとならないようだ。


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