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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第3回   CASE1・3
 猿橋が、机の上にレポート用紙の束を置いて、言った。
「鮎見くんの見立て通り、一つの不思議事件が実体化した」
 鮎見は占いのようなもので事件を予期したり、その真相を突き止めたりってことが出来る。もっとも、百パーセントの的中率じゃあなく、せいぜい二〜三割程度だが、そういうことが出来るのと出来ないのとじゃあ、雲泥の差だからな、拝み倒してでも来てもらうっていうのも、頷ける。
「一昨日(おととい)、三年C組の男子三人、D組の女子二人の、バカ五人組が、来週行われる県内統一模試の試験勉強の息抜きに、『逆回転する時計』の不思議現象を『確認』しようと、学園に来たそうだ。そして、五人ともそれを目撃した。昨日(さくじつ)の朝、男子二人、女子一人が、自宅で朝食中に昏睡状態に陥ったのを聞くに至って、『不思議現象に伴う噂』が本当だと思い、怖れをなして、生徒指導教員に自訴して出た。まったく、高校三年生にもなって、頭の中身は小学生並みだな、いつも思うことだが」
 怒るでもなく、嘲(あざけ)るでもなく、ただクールに言ってのける猿橋を見てると、こいつには赤い血が流れてないんじゃねえか、って思う。いつものことだが。
 まあ、それはおいとくとして。
 俺はレポート用紙を手にとって聞いた。
「じゃあ、今回は『逆回転する時計』の不思議現象を潰せばいいんだな?」
「ああ」と、猿橋は頷く。俺はレポート用紙を見た。この現象が最初に確認されたのは、一年前の一月。最初の目撃者は、受験勉強の息抜きに、コンビニに買い物に行く途中で学園の前を通りがかった三年生男子A。Aがその話をクラスでしたところ、瞬く間に広まり、確認に訪れる者が続出した。だが、実際に見る者は少なく、複数人だった場合、その現象は起きていない。
 ここまでは以前も読んだ通りだが、今回は新しく、猿橋が言うところの「バカ五人組」の証言も加わっていた。
 璃依が咳払いして読み上げた。
「三年C組、形本(かたもと)宜浩(のりひろ)の証言によると、『午後十一時四十五分、学園正門前に集合。一同、時計を眺めていました。自分は本気で信じてはおらず、ただ、D組の江藤(えとう)利佐子(りさこ)が、興味を持っていて、C組、角田(つのだ)俊一(しゅんいち)の呼びかけに乗り、この企画に参加したのだ、自分もこの企画に乗れば、夜遅くに、同人(どうにん)と同じ時間を過ごせるのだ、そして、今まさに深夜に同人と一緒の場所に立っているのだ、ということにのみ、意識を向けていました』」
 こんな感じで、璃依は読み上げていく。……ニュース調で。
 ていうか、これ、本当に生徒の証言を書いた物か? なんかの犯罪の調書だったりしない? 妙に細かくて説明調なんだけど。……まあ、いつものことではあるんだがなあ……。


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