一呼吸置いて、先生は言った。 「それって、アンタの勘違い、幻想だから!」 ……。 「はいぃぃぃぃ?」 俺たち四人の声がハモった。 「『チェケラ』の活動って、ホントに、しんどかったの! 楽しいって思ってたの、多分、アンタだけ! 伊東くんと大村くんは、もともとアンタと近づきたくて、バンドのこと持ちかけてきたんだし、裏では険悪だったわよ? 私、大村くんと同じクラスだったから知ってるけど、伊東くんのこと、ボロクソに言ってたんだから! 伊東くんも似たようなものだったみたい。アンタがいないところで、とっくみあいの喧嘩になりそうなこともあったのよ? あの二人が力、合わせたのって、あのプロダクションのオヤジをタコ殴りにしたときぐらいじゃないかな? それにね、高沢ちゃんも、もとからアンタのこと、嫌ってたわ。高沢ちゃんって、大村くんのこと、好きだったのよ。私もね、ヴォーカルでいい気になってる、アンタがいけ好かなかったな。他校の男子交えて、何人かの女子でカラオケ行こうってなって、アンタ呼んでくれみたいなこと言われたけど、『彼女、カラオケなんて、バカバカしくて、やってられない、って言ってた』とか言って、呼ばないようにしてたの!」 ……マジか、この話? 「アンタの不倫が露見する前から、バンドの人間関係、しっちゃかめっちゃかだったのよ!」 と、三隅先生は皮肉な笑いを浮かべる。 「もう、人間関係、ホントしんどくて、バンド辞めたくて辞めたくて。そんな時に伊東くんと大村くんが暴力事件起こして。二人には悪いけど、これでバンド、解散になる!ってうれしくなったわ。……なかなか『辞めたい』って言い出せないのよ、一度『ベースやりたい』とか言ってバンド始めちゃうと」 雑音がとまった。 「だからさ、そもそもアンタ一人の幻想だったの、『チェケラ』が楽しかったって。現実、見なさい?」 しばらくして、バンドの幻姿が光の粒になり、空に吸い込まれていった。 「……解決、したのか?」 俺の呟きに、璃依は首を傾げ、志勇吾は肩をすくめ、鮎見は溜息をつくだけだった。
一応、解決って事になるんだろうか? いささか疑問だが、翌日、意識不明者が全員、回復したから、よしとする。 ……本当にいいのか? ちなみに、あのあと、先生に聞いたんだ。 「先生、今の話、マジですか?」って。 そしたら先生、言ったんだ。 「さあ? どうかしらねえ?」 楽しそうに、ケラケラ笑ってた。
……よくわからねえ……。
(CASE3・了)
※ ちなみに。 「ピー・タイ・ホー(私の手持ち資料では『ピー・タイ・フー』となっていて、それをもじりました。以下、これにならいます)」の封印法の一つを(本編のような「生け贄」を使う方法があるかどうかは、寡聞にして存じません。申し訳ない。訳あって、一部、略します)
1.ピー・タイ・フーに取り憑かれた人に壺を持たせ、家の中央の部屋に待機させる。 2.複数の人間が、家の全ての出入り口から、あるアイテムを持って入り、入ったら、内側から出入り口に呪符を張る。 3.その状態で家の中を回り、アイテムの力でピー・タイ・フーを中央の部屋まで追い詰める。 4.追い詰めたら、壺の中にピー・タイ・フーを誘導し、その壺に呪符を貼って、土中深く、埋める。
もうちょっと手順とかあるんですが、こんな感じ。
|
|