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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第26回   CASE3・4
「昏睡者が出た」
 俺たちは顔を見合わせる。
「一年女子に二人、二年男子に一人。三人は音楽部所属だ」
 そして、ファイルを見せる。それによると、その三人(現場には六人いたそうだ)は「音楽部のコンサート」を確認したくて、裏門から侵入したらしい。そして音楽室がある、研究舎を見上げた。音楽室は研究舎二階の端っこなんだが、さすがに建物の中には入れない。だから、ただ見上げていたそうだ。
 すると、午前零時になったとき、部屋の明かりがついたそうだ。そして、そこからまるで映像を投影するかのように光が漏れてきて、六人の前にバンドが現れた。ヴォーカル、キーボード、ギター、ベース、ドラムスの五人だったそうだ。ただ、白く光っていたんで容姿は確認できず、歌っている内容も、色んな音が混ざった雑音だったらしい。
「昨夜、確認は行っている。間違いない」
 また、こいつは……。
 俺は頷いた。
「わかった。今夜確認する」
「頼む。それから、アークの方もよろしく」
 アークか。
 俺は、以前も言ったことを、もう一度言っておくことにした。
「だからさ、そういう探知には、向いてねえんだよ、俺たち。ダウジングの能力を持った誰かを呼んだ方がいいって。それこそ、鮎見みてえに転入させるとか、さ」
 鮎見が俺を睨んだが、無視しておく。
 猿橋がメガネのブリッジを「クイッ」と押し上げて言った。
「そういう『人事権』は理事長にある。仮に僕がそれを具申したとして、理事長が了承すると思うかい?」
 シニカルな笑みで。
 ちょっと考えて、璃依が困ったような顔になった。
「今の乾理事長って、生徒会長が前の理事長の孫だって、知ってるのよね? そんな人間が『探知能力者を転入させろ』なんて言ったら」
 鮎見が皮肉めいた笑みを浮かべる。
「生徒会長が『アーク』と呼ぶ、何かを捜すかも、って考えるわよね」
 すると、猿橋が、こいつはこいつでまた、シニカルな笑いを張りつけた。
「なるほど、やっぱり気がついていたか、『アーク』が理事長にとって、都合の悪いものであることに」
 俺は「ふう」と言ってから答えた。
「去年の十月、お前が生徒会役員選挙でトップ当選して、生徒会長になってから『アーク』がどうたら、言っただろ? 当時FACELESSにいた三年の先輩とかと、『なんでそんなこと言い出したんだ?』って、話してたんだ。で、『アーク』がモーセの十戒石をおさめた聖櫃(せいひつ)のことじゃないかって先輩が言って、そこから『何らかの契約文書』なんじゃねえか、ってなった」
 猿橋が愉快そうに言った。
「確か、卒業した田坂(たさか)千尋(ちひろ)先輩は、洞察力に優れていたな。彼女は、大学で考古学を専攻していると聞いたが。なるほど、ひょっとしたら我が校の卒業生から、考古学の新説を提唱する者が現れるかもしれん」
 本当に喜んでいるようにも、そういう振りにも見える。ほんと、食えねえヤツだな、こいつ。
「なら、話は早い。君たちには頑張って『アーク』を見つけ出してもらいたい」
 俺は眉を片方上げて言った。
「つまり、俺たちに『駒』になれ、と?」
 猿橋はメガネのブリッジを押し上げ、鼻で嗤って答えた。
「何を今さら」


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