俺は次元断裂剣を落とし、璃依はブレスレットとアンクレットのインジケーターを光らせ、二人の先回りをする。幸い、この辺りには林があって、その中を走れば、二人に気づかれない。地上近くに降りてきた「それ」を俺は斬り、璃依は拳や蹴りで破砕する。しかし。 「上空にいるヤツは、どうするか、だな……」 あの「何か」は、おそらく「ここが心霊スポットで、来れば奇妙な出来事に遭遇する」という人々の思い込みや「期待」が作り出した「念の塊」だ。それに取り憑かれると、十中八九「心霊現象にしか見えない」出来事が起きるか、そういう事態になる。澄香ちゃんに取り憑いたら、どんな事態になるか、わからねえ。 璃依が上空を見上げた。そして、うなずき、バックしてから助走をつけ、一気に鉄塔を駆け上る。そして。 てっぺんに登り、鉄塔をらせん状に駆け下りながら、気合いもろともに「何か」を拳でたたき落として来た。 落ちてきたヤツを俺は斬る。そして取りこぼしたヤツは、途中で身を翻して再び駆け上がった璃依が、拳で叩いていた。また身を翻し、駆け下りながら、璃依は残った「何か」を砕き。 「太牙ァ! どいてェェェェェ!」 璃依が落ちてきた。 爆音がとどろいて、俺が飛び退いたところに、璃依が着地した。もうもうと土煙が舞う中、俺は言った。 「……大丈夫か、璃依……?」 どうにか(墜落じゃなく)脚から着地した璃依だが。 「太牙、肩、貸して……」 「お、おう。……歩けるか?」
「なんか、さっき、すごい音がしてたけど?」 志勇吾がそう言うと、澄香ちゃんがわざとらしく、 「きっと、ポルターガイストだよー、こわいよー、志勇吾くぅーん!」 なんて言った。そして。 「ねえ、志勇吾くん、なんか、見える、変な影とか?」 と、さっきまでの怖がりっぷりが別人だったかのようなドライさでそんなことを聞いた。 「え? ……いや、特には」 これは、多分、志勇吾にも本当に見えてない。俺と璃依で処分したからな。もっとも、「ここが心霊スポット」だって信じる人が一定数いる限り、さっきのようなヤツはいくらでも復活するけどな。 「そう。……見えないんだ……」 そうつぶやいてから、また気を取り直したように、澄香ちゃんは言った。 「ね、次、行こ?」 笑顔で。 「……澄香ちゃん、さっきも言ったけど、バス停はそっちじゃなくて……!」 と二人は、別の方へ小走りで向かっていく。 璃依が行った。 「あたしの記憶に、間違いないとしたら、あっちの方にも、心霊スポットがあったはず」 「マジか……?」 「さっきの鉄塔がらみなんだけど。ちょっとしたモニュメントがあるのね? 事故のせいで、そのモニュメント、呪われたっていう話が……」 ちょっと考えて、俺たちは、また林経由で先回りした。
|
|