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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第2回   CASE1・2
 四月に入って、そろそろ連休が近づいたある日、俺は生徒会長の猿橋(さるはし)零斗(れいと)にメールで呼び出された。こいつが俺を呼び出すのは、間違いなく「七不思議」関連だ。
 放課後、二年教室がある本校舎三階からいったん二階に降り、渡り廊下を通って、職員室だの特別教室だのがある研究舎へと向かう。生徒会室は、そこの三階にある。ちなみに本校舎一階には保健室、購買部、学食、会議室、校務員さんの宿直室、夜間警備員さんの詰め所。二階には三年生、三階には二年生、四階には一年生の教室がある。
 研究舎は一階と二階が特別教室。三階に職員室や生徒会室、各種部活を取り仕切る部活動連絡会の本部、放送室、生徒指導室、進路相談室。四階に理事長室(ただし、今の理事長さん、ここではあんまり見たことない)、校長室、教頭室、学園理事の共用の広めの部屋が一つ、先生方が使用する特別会議室。
 研究舎と渡り廊下で繋がってる別棟(べつむね)に図書室。
 あとは、敷地内に屋内プールもある体育館とか、体育系の部活が使用するクラブハウスとか、武道場とか、倉庫とか、でっかい時計のある高さ二十メートルの時計塔とか、今は閉鎖されてる旧講堂とか。
 生徒会室に向かう途中で、ワインレッドのブレザーを脱いで肩にかけた女生徒に声をかけられた。身長は百六十五センチ。スレンダーだが出るところは出た、恵まれた体型の持ち主。栗色の髪をショートカットにした、猫みたいな顔立ちの女子だ。
「ああ、太牙」
 と、女生徒が俺に微笑む。
 俺の幼馴染み・久能木(くのぎ)璃依(りい)だ。で、こいつもFACELESSの一員。歩いて来た方向から考えると、さしむき放送室から来たか。
 余談だが、うちの学校の制服について、ちょっと触れておこう。男子はワインレッドのブレザーに白いシャツ。スカイブルーのネクタイで、ネクタイには学園の記章を簡略化したシンボルが刺繍してある。履いているのは、グレイのスラックス。女子は男子と同じくワインレッドのブレザーで、中は白いブラウス。オレンジ色のネクタイだが、男子よりも長さは短い。実はこれ、首の後ろで、ホックで結ぶ、リボンタイの一種だ。そのタイには男子と同じく、学園の記章を簡略化したシンボルが刺繍してある。象牙色のプリーツスカートには、グレイとブラックのグラフチェック柄がある。
 美台市内の中学・高校の中では、一番「ファッショナブル」なんだそうだ。よくわからんが。
 俺は璃依と合流した。
「放送室か?」
「うん」
 こいつは放送部に入ってる。将来は女子アナを目指しているんだとか。
 俺たちはダベりながら、職員室の隣にある生徒会室に入った。入るなり。
「いつも、言ってるだろう、ノックぐらいしたまえ」
 イヤミな声がした。
 メガネのブリッジを押し上げながら、椅子に座った生徒会長・二年E組男子の猿橋零斗が言った。
「すまんすまん、自動ドアなもんで、勝手に開いちまった」
 ニヤけながら俺がそう言うと、既に来ていたFACELESSの一員、ポニーテイルでメガネの女子、鮎見(あゆみ)詠見(よみ)が、呆れながら、
「そんなわけあるか」
 と呟くのが聞こえた。
「よう、お疲れ」
 同じく先に来ていたFACELESSの一員、ガタイのいい体育会系男子の春瀬(はるせ)志勇吾(しゅうご)が、軽く手を上げる。
 俺、璃依、鮎見、志勇吾の四人が現在のFACELESSのメンバーだ。俺は二年A組、璃依と鮎見がB組、志勇吾がC組。
 そう、今FACELESSは二年生四人だけで組織されている。去年は三年生が二人いたんだが、卒業しちまったからな。おまけに二年生がいなかった。その年は、対象者が誰も入学を希望してくれなかったんだそうだ。ついでに言っとくと、鮎見は昨年九月からの転入者。「三年生二人、一年生三人じゃ、心もとない」ということで、再度、対象の家々にあたり、拝み倒して来てもらったという。そのせいか、来たばかりの頃は不機嫌そのものだった。しかし、彼女が希望する大学へ推薦してもらえるとか、ほかにもいろいろ便宜を図ってもらうって事で、十月になる頃には打ち解けてきたっけ。
 ちなみに特別扱いされてるのは鮎見だけじゃねえ。璃依は女子アナになるために有利な大学とか、専門学校を紹介してもらえることになってるし、志勇吾は陸上部だが、他の部員には内緒で、休みの日なんかに無償で特別トレーナーを手配してもらえることになってる。
 俺も、定期テストで「赤点が回避できる」ようになってるんだ。
 もちろん、こういった諸々の「特典」は、他の生徒には内緒だ。
 ていうか、FACELESSの存在自体が内緒だ。
「FACELESS(主体性がない)」っていう言葉には、「身元を隠してる」って意味もあるんだぜ?


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