もうわかると思うけど。 今回のこれ、璃依の考えたことだ。で、澄香ちゃんも乗ってきたという。もちろん、俺たちは別ルート(タクシーだ。ちなみにタクシー代は、澄香ちゃんが出してくれた。お小遣いとバイト代を貯金してたものだそうだ)で先回りして、二人……っていうか、志勇吾が朴念仁だから、うまく事が運ぶように見守ろう、ってなったんだが。 「なあ、璃依、お前、知ってたか、心霊スポットの話?」 タクシーに乗って、俺は璃依に聞いた。 「放送部に入ったときに、過去のデータベースでいくつかは。でも、最実平のやつは知らないな」 なので俺は。 「運転手さん、最実平三丁目の心霊スポット、ってご存じですか?」と聞いてみた。 「ええ、最実平の辺りでは有名ですよ? 確か、二十五、六年ぐらい前だったかなあ……」 運転手さんによると、二十五、六年ぐらい前まで、その辺りにでっかい洋館があったんだという。そしてそこには外国人夫婦と、七、八歳ぐらいの女の子が住んでたという。ところが、しばらく女の子の姿を見なくなったと思ったら、夫婦は突然、帰国してしまった。それから五年ほどしてその洋館を解体したとき。ある部屋の床下から、小さな白骨が発見されたという。 「その夫婦が子どもを殺して、その家の床下に隠したんだ、って噂になりましたね。以来、そこに行くと小さな白い影が現れて、手招きしたり、あの世に引きずり込もうとする、なんていわれてます」 璃依が唾を飲んだんだろう、ゴクリと喉を鳴らして言った。憑き物とかは、相手にしてたから、その手の話には耐性があるが、物理的な「白骨」っていう話には、こいつは弱い。 「……本当なんですか……?」 すると、わははと笑ってから運転手さんが言った。 「デマですよ、デマ! 当時、その子はなんか病気にかかってたそうなんですな。それで、外出を控えてた。で、治療のために、本国に帰ったってことらしいです。私のカミさんが当時、その近くに住んでましてね、ご近所付き合いみたいなことしてたから、事情をよく知っとるんですよ。ていうか、五年ほど前に、その娘さん本人が仕事で日本に来て、カミさんに会いに来てるんですよ。いやあ、美人さんでしたねえ。まあ、幽霊の正体見たり、ってやつですな」 「なあんだ」 と、璃依が安堵のため息を漏らす。 「でも」と、運転手さんは続けた。 「白骨、それも人骨が出てきたのは本当らしいです。もっとも、建物じゃなくて、庭。なんでも、あの辺りに昔、江戸時代からの無縁墓地のようなものがあったそうで、大正時代によそへ移転したときに、忘れられたお骨(こつ)があったんじゃないか、っていわれてます」 俺は、ジャケットの下につけたガントレットに手をやりながら、璃依を見た。璃依もブレスレットを触りながらうなずいた。 つけてきて、正解だったかも知れねえ。
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