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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第17回   CASE−EX・2
 翌、土曜日。夜七時。志勇吾は俺の部屋に来ていた。呼び出す理由は適当だ。いつも、意味なくうちに来てるしな。
「そろそろ帰るわ」
 志勇吾がそう言ったとき。
「おう……。あ、ちょっと待ってくれるか?」
 と、俺は携帯片手に外へ出る。そして「打ち合わせ通り」の行動をとった。すなわち、璃依にあらかじめ文を打っておいたメールの送信だ。部屋へ戻ってしばらくすると。
「太牙ー!」
 と、璃依が部屋にやってきた。
「ああ、春瀬くん、来てたんだ」
 そう言って、俺に向く。
「今さ、澄香ちゃんから『迎えに来てほしい』って電話があったんだけど、ほら、あたしたち、話し合いがあるじゃん? だから、誰か代わりに……」
 そこまで言って、璃依がまるで「今、気がつきました」と言わんばかりに、志勇吾を見た。
「そうだ! 春瀬くん、行ってくれない?」
「……すまん、いろいろ意味不明。なんだ、その話は?」
 まあ、そうだろうなあ。璃依のマシンガンみてえなトークで、一気にここまで来たし。
 咳払いして、璃依が言った。
「澄香ちゃん、今日、お出かけしてたんだけど。ちょっとよく知らない場所に来たんだって。それで、迎えに来てほしいけど、今夜は、このアパートの大家さん含めて、お話し合いがあるのね? おじいさんとかお父さんとか、呼びつけるのは申し訳ないって、あたしに電話かかってきたの。でも、あたしも太牙も、そのお話し合いに出ないとならないの」
「なんだ、その話し合い、って?」
 璃依が言った。
「今度、金属ゴミの収集場所が変わるの。リサイクル業者に売却するんだけど、その収益の配分をどうするかで、話し合わないとならないんだって」
 立て板に水だな。さすが女子アナ志望。ちなみに、利益配分がどうの、っていうことについての話し合いがあるのは本当。ただし、俺たちみたいな高校生が出るような話じゃない。ていうか、もっと言うと町会単位での話し合いなんで、このアパートからは、実は大家の爺さんしか出席してない。
 しばらく考えていた志勇吾だが、考えられるといろいろ話の辻褄とかおかしくなるんで、俺は言った。
「ほら! もう夜も遅くなるしさ! お前なら、澄香ちゃんも頼りにしてるし! 頼むよ」
「あ、ああ。まあ、知らない人じゃないから、構わんが。……で、どの辺りにいるんだ? よく知らないっていっても、迎えに来いって言うぐらいだ、ヒントはあるんだろ?」
 よし、乗ってきた! ……という、そんな思いは、おくびにも出さず、俺は璃依を見た。うなずき、璃依は言った。
「ええっとねえ、電信柱とかにある標識には『最(さい)実平(さねひら)三丁目3』ってあるみたい」
「……え?」と、志勇吾が怪訝な表情になった。
「マジか、それ?」
「うん」と、璃依が応えると志勇吾が何やら考える。ちなみにこの「最実平三丁目」っていうところは、美台市の北東の外れにある。隣町との、ほぼ境っていってもいいところで、未開発区域だ。だから、この辺りは林みたいになってて、人家はまばら、わざわざ行くようなところじゃない。だから志勇吾が怪訝な表情になるのもわかる。
 だが、志勇吾が言ったのは、俺たちとは違う疑問だった。
「あそこには、この街の有名な心霊スポットがあるな。なんで、彼女、そんなところに?」
 耳ざとく聞いた璃依が聞いた。
「なに、『有名な心霊スポット』って?」
 その話は俺も初耳だ。だから聞いた。
「そんなもんがあるのか?」
「ああ。……まさか、知らないのか、この街の心霊スポットの場所?」
 俺は璃依と顔を見合わせた。答えたのは、俺だ。
「ああ。七不思議事件で手一杯だしな」
「それもそうか。……この街には、あちこちに『心霊スポット』って呼ばれてるところがある。その大部分は、まあ、『話だけ』なんだが、何ヶ所か『本物』もある。最実平三丁目も、そんな『本物』があるところだ」
 璃依が不安げな表情になった。
「本物、って……?」
「ゴーグルをつけて確認したから、間違いない。……まあ、せいぜい人を驚かせるか、イタズラをする程度の存在しかいない。昏睡事件を引き起こすような凶悪なやつが出るのは、学園だけだ」
 で、璃依が澄香ちゃんに「志勇吾が迎えに行く」ってことを伝え、志勇吾にも澄香ちゃんの携帯の番号を教えた。で志勇吾は「バスで直行できないから、その場所を動くな、大体、十分ぐらいかかると思うって伝えといてくれ」って言って、とりあえず最寄りのバス停まで行くために、出て行った。


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