その時、妙な気配が走った。 俺たち四人は、咄嗟に校舎を見る。気配がするのは、本校舎の屋上。白い一群が見える。今いる位置は正門、直線距離で三、四百メートルは離れているのにもかかわらず、「声」が聞こえ始めた。でも。 鮎見が眉根にしわを寄せる。 「なんだ、これ? 唄ってる、じゃないわよ?」 志勇吾も思い切り苦い表情になってる。 璃依は、こいつでまた、眉間に右の中指を当て、唸っていた。 俺も言った。 「合唱っていうか、好き放題、勝手に唄ってるだけじゃねえか」 歌っていうより、雑音にしか聞こえねえ。 すると、きょとんとなって、仲島さんが言った。 「現れてるのかい、合唱部……?」 「え? ええ」 と俺が答えると、璃依、志勇吾、鮎見も頷く。 しばらくして。 「そうか。私には見えないし、聞こえない。じゃあ、娘とは関係ないのか」 寂しそうに言う仲島さんを見てると、いたたまれない気持ちになるが、とりあえず、この不思議は潰さないと! 俺は、裏門へ回ろうとした。正門のところには、なんかのセキュリティーの装置があるって聞いてるからな。裏門に回って、警備員さんに入れてもらおう! ブレザー越しに籠手をさすると、俺は走り出し……そうになったところで、制止の声がかかった。 「待て、太牙!」 志勇吾だった。 何だろうと振り返ると、志勇吾がゴーグルを装着して、屋上を見ていた。そして、目の前にある白いプレートを、手動で左右に展開させる。眉間のところにスペードマークがある。上の方にあるスイッチを入れると、スペードマークが紫色に光った。 しばらくして。 ゴーグルを外し、志勇吾が見えたことを言った。そして。 「とりあえず、調べてみよう。それから、仲島さん、申し訳ありませんが、あなたにも『同席』をお願いすることになるかも知れません」 「私も?」 首を傾げる仲島さんに、志勇吾が頷いた。
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