見ると、両膝を立てた格好で、璃依は気を失ったままだ。ついでに、パンツが片っぽの脚から外れてる。 ……。 履かせといてやるか。それに、なんていうか、その、ちょっと「見えてる」し? 俺はなるべく「それ」を見ないようにして、あいつのパンツを持ち、履かせた。膝まで上げた時、何かが俺の両手を掴んだ。 ……うん、この場で、この状況で、俺の手を掴んでるのは、一人しかいねえよな。 「……久能木璃依さん、お目覚めになったのデスネ?」 俺の声は震えていたかも知れねえ。 俺は床を見ていたからわからねえが、声の感じからして、璃依は上半身を起こしているらしい。 「宇津太牙くん、聞きたいことがあります」 アナウンサーとか、レポーターが誰かに質問する時のような事務的な声音(こわね)だ。 「なんでございましょうか、久能木璃依さん?」 「どうして、あたしのショーツが膝まで脱げていて、それにあなたの手がかかっているのでしょうか?」 「……それを説明するには、若干の時間が必要です」 「そうですか。それでは、十秒、差し上げます」 短(みじか)ッ!! でも、説明できねえよりはいい。俺は、簡潔に説明しようと口をひら……。 「じゅう。」 「早(はや)ッ!! ていうか、お前、ちゃんと数えろ……!」 思わず顔を上げた俺の目に、こめかみに青筋を浮かべて、なんだか怖い笑いを張りつけた璃依が、右拳を撃ち込んでくるのがうつった。
その後、数秒間の、俺の記憶はない。
(FINAL CASE・了)
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