真条さんの運転する「BiShop」の店用車に乗り、俺と璃依は乾理事長の別宅へと来た。 この辺りは、別荘地になっているらしい。来たことねえな。 理事長の別宅の前には、制服のお巡りさんが二人いる。理事長が帰ってこないか見張っているそうだ。 真条さんが「マルエフの関係で、ここの調査に来た」って話したら、あっさり立入許可が出た。やっぱ、怖ェよな、権力って。 日射しが降る中、俺はまず、建物の周りをグルリと回ってみた。中に刑事さんたちが入って調べた時に、カーテンとかは開けたんだそうで、部屋の様子が見える。 「ここは、リビングか。……誰かがいる様子はないな。隣は……。キッチンか。ものが多いけど、隠れてる様子はないなあ」 一通り回ってみたが、外からは確認できねえ。二階もあるし、ここはやっぱり中に入らねえとな。 俺は璃依とともに、中に入った。真条さんには、連絡用に、外で待っててもらう。一応、携帯がつながるみてえだし。 玄関を上がって、まず右手にある洋間に入る。外から見た時にも思ったが、ここは書斎っぽい。でも、パッと見「悪魔召喚」に関係した本とかはなさそうだ。「機械工学」だの、「金属の性質」だの「船の構造」だの、難しそうな本ばっかりだ。 その奥にある洋間も、似たようなものだ。隣の部屋よりもちょっと砕けた感じで、ステレオが置いてあったり、CDラック、DVDラック、テレビなんかのオーディオ設備がある。 そこを出て、いったん玄関へ戻り、リビングに入る。さっきの洋間を足したぐらいある。サイドボードには、高そうなお酒が並び、デッカい絵が飾ってある。プロジェクター用のスクリーンもある。特に異常があるわけじゃねえ。 なので、続いているキッチンに入る。いわゆるダイニングキッチンってヤツだ。ここも、特に異常は……。 「食べ物とか、飲み物とか、空っぽになってる」 と、璃依が言った。 「え?」 「冷蔵庫の中、空っぽなの」 「別宅だし、そういうこともあるんじゃねえの?」 「でもね?」 と、璃依は隣の冷凍庫を開ける。 「この中、霜が結構ついてるんだ。ドアの締まりが悪いわけでもないのに、こんなに霜がついてるってことは、水分が多く流れ込んだってこと。この霜の量、あたしの部屋の冷凍庫と似てるから、日に何度も開けたってこと。今、暑いもんね」 「以前についたものとかじゃねえのか?」 「その可能性もあるけど、もしそうなら、こんなに簡単にドアが開(ひら)かないと思う。長いこと放置してると、霜が増殖して、ドアが固まるもん。やっぱり、誰かいるよ、この建物」 そうか。じゃあ。 「その奥のバス・トイレ……には隠れられそうにないか」 「やっぱり二階じゃない?」 璃依が言う通り、二階だろうなあ。そう思って何気なく振り返り、外を見た。いい天気だなあ、と思った時。
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