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作品名:FACELESS−生徒会特務執行部 Special Edition 作者:ジン 竜珠

第102回   FINAL CASE・11
 明けて月曜日の午後は、急きょ、生徒たちは「自宅学習」となった。まだ二時間目が終わったばかりなんだが、みんな「ラッキー!」とか言って浮わっついてる。しかし、俺たちは生徒会、ていうか猿橋に呼び出されていた。
 椅子に座った猿橋が、例の如く、なんだか「秘密部隊のリーダー」っぽく話し出した。
「本日、午後から自宅学習になったのは、臨時理事会が開催されるからだ。どうやら、乾理事長の解任動議があって、乾理事長の解任は確実らしい」
 鮎見が面白くもなさそうに言った。
「先月の海難事故に加え、殺人事件の容疑者じゃあねえ」
「え? なんだ、それ?」
 と、俺は鮎見を見た。俺だけじゃねえ、璃依も見てる。
 溜息をついた鮎見が言った。
「ニュースぐらい、見なさい」
 璃依が申し訳なさそうに言う。
「ごめん、このところ、修行漬けで……」
 その言葉に、ちょっとだけ気まずいものを感じたらしい鮎見が、あさっての方を向いてから、言った。
「先週の火曜日に、雉谷造船の社長さんが何者かに殺されて、その容疑者として、乾理事長の名前が挙がってるの。動機が不明だから断定はされてないけど、行方をくらませてるから、無関係じゃないだろうっていうことだったわ」
「それについては、こちらのツテで警察から情報を抜いた」
 と、猿橋が言った。お前、どっかの諜報機関の人間みたいになってんぞ、マジで?
「先月末に起きた海難事故に絡んで、何らかの不正があったらしい。それが何かについては明らかではないそうだが。それだけじゃない。先月、『いぬいクルーズ』の社長秘書、つまり『いぬいクルーズ』の社長としての理事長の部下が、不審死を遂げているんだが、その被疑者としても、追われているらしい」
「マジか……!」
 驚いた。そんなとんでもない犯罪者だったのか、あの理事長……ていうか、顔、満足に見たことねえから、感情移入のしようがねえけど。
「まあ、そんなわけだから、理事長の失脚は確実だ。だが、今日、ここに来てもらったのは、そのことと直接の関係はない。真条愛那さん、FACELESSの初代メンバーの真条さんが、何やら君たちに、用があるらしい。同行して欲しいという連絡が…………。あと、一時間ほど、で……、……うっ……!」
 猿橋が額に手を当て、頭を振る。そして、いったん立ち上がったが、不意に全身の力が抜けたかのように、床に倒れこんだ。
「猿橋!」
 倒れた猿橋に駆け寄ろうとして。
「……!? これは……!?」
 異様な「何か」が、この空間に満ちている。俺たちは無意識にそういうのを弾く技術なり力なりを身につけてるが、これはひょっとすると!
 志勇吾が言った。
「これは、生命エネルギーが吸われてる! いや、何かが吸収していく!」
 何が視えてるかまでは、志勇吾じゃねえとわからねえが、多分、七不思議事件を引き起こしている「力」だろう。
 そう思った時。
 生徒会室のドアが開いて、
「みんな!!」
 と、声がした。
 その方を見ると、真条さんが飛び込んできたところだった。
 璃依が驚いたように言った。
「真条さん!? 一時間後だったんじゃあ!?」
「胸騒ぎがしたから、店長に無理言って出てきたの! 急いで!」
 俺たちは真条さんに急(せ)かされるまま、部屋を出た。
 途中、職員室の前を通ったんだが、蜂の巣をつついたような騒ぎになってた。断片的に聞こえたところじゃあ、校内、至る所で生徒たちが倒れ、意識不明になってしまったらしい。
 俺たちは、研究舎一階にある昇降口を出る。そこで、真条さんがやや早口に言った。
「先々週なんだけど、私、笠井さん……知り合いの刑事さんに、今、市内ニュースを騒がせている乾社長の居所を、占ってあげたの! その時、出たのは、山の手の方にある別荘地。でも、そこには、いなかったみたい。でも、私、占いには自信があったの! だから、日をかえて、抽出条件とか、かえて占ったの。そうしたらまた、別荘地って出て! で、その時に『ゲーティアの悪魔』が関わってるの、思い出して! 『ゲーティア』の中に、『バーエル』とか『フォラウス』っていう悪魔がいるんだけど、その悪魔って、召喚者の姿を、他者から認識させなくする力を与えるのね? もし、その力が働いているなら、それを破れるのは、君たちしかいない!」
 そうか、それで、真条さん、俺たちを……!
 その時、志勇吾が言った。
「太牙、久能木、お前たちが行ってくれ! 俺と鮎見は、ここで契約書を探す!」
「え? 探すって、志勇吾?」
「実は、俺たち、契約書の探索をやってたんだ。なんか、お前たちが自己修練やってるの聞いて、俺たちにもなんかできないかって思ってな」
 恥ずかしそうに、志勇吾が言う。そうか、こいつらもいろいろとやってたんだな。
 俺は頷いた。
「わかった。こっちは頼む!」
 志勇吾と鮎見が頷いたのを確認して、俺と璃依は本校舎の昇降口で履き物を履き替え、学園敷地の東にある道路を隔てた先にある、来客用駐車場に向かった。


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