※こちらだけの限定バージョンだったんですけど。某サイト様にもアップさせていただきました。申し訳ない。
どこの学校にも、って訳じゃあねえと思うんだが。 俺が通うここ「私立(しりつ)美台(みだい)学園高等学校」にも、「七不思議」なんてものがある。 ただ、他の学校とは、ちょいと事情が違うんだな。 例えば、ここの七不思議を列挙してみる。
・夜中、グラウンドを駆け回る初代理事長の銅像。 ・夜な夜な繰り広げられる、音楽室でのコンサート。 ・毎日、少しずつ変わっていく、初代校長の肖像画。 ・深夜十二時になると逆回転を始め、六時間後にまた回転がもどる、時計塔の大時計。 ・今は閉鎖されている旧講堂で、雨の夜に上演される謎の芝居。 ・夕方、体育館の西側の壁に浮かび上がる、ボクシングの試合。 ・深夜、本校舎屋上で唄う白い合唱部。
これが現在の七不思議だ。 「え? 現在の? どういう意味?」 そう思うだろ? 実は、七番目のヤツは、先月……三月の中頃に発生したんだ。それまでは「首とか腕が生えてくる、美術室のトルソー」だった。それを二月に解決したんで、代わりに発生したってわけだ。 訳がわかんねえだろ? 俺も、去年の四月に「お役」を申しつけられたときは、何が何だか、さっぱりわかんなかった。そして、「なぜ、そうなるのか」ってことについちゃあ、未だにわかってない。 この学園、「七不思議」っていう数は固定されてるんだ。つまり、もし一つを解明、あるいは解決しても、また別の何かが発生する。 ……そもそも「七不思議を解決」ってこと自体、わかんねえよな? じゃあ、最初から、話そう。
いつ頃からか、はっきりとはわからないらしいんだが、この美台学園高校では、いわゆる「七不思議」というものがはっきりとした「現象」で起きている。ただ、それでも最初の頃は、誰か一人だけがいる時に起きるんだったり、複数の人間がいても認知するのは一人だけなんだそうだ。だが、それがある日、大勢の人間にも目撃されるようになる。すると、その目撃した生徒のうち、何人かが意識不明となり、やがて……。 伏せられちゃあいるが、亡くなった生徒もいたらしい。 幸い、大体において、四、五日後に意識を取り戻すらしいんだが、どういうわけか衰弱がひどく、しばらく日常生活が送れなくなるらしい。中には、日常生活を送るのが困難になってしまって、休学した者もいたそうだ。事態を重く見た学園側は、それこそ占い師だの祈祷師だの、霊能師だのを呼んだらしいが、解決に至らず。結局、箝口令が敷かれ、七不思議の話題すら口にしてはならないってことになったらしいが、それでも興味本位で夜の学園に忍び込むバカは絶えず、結果、意識不明になってしまったりするケースがあとを絶たなかった。 それが今から九年前、ある一人の生徒が、一つの「不思議」事件を解決した。すると、その事件で昏睡状態になっていた生徒たちが意識を回復したんだそうだ。しかも衰弱することなく。そこで、学園はその生徒を中心として、七不思議を潰すための秘密機関を組織した。 それが「FACELESS(フェイスレス)」……生徒会特務執行部だ。
七不思議を潰せるのが、どうやら学園の生徒らしい……ていうか、生徒にしか潰せないらしいってことがわかったんで、FACELESSを組織するために全国の「その手」の家に打診があり、了承した家から美台学園に入学手続き、または転校手続きをとって、生徒として招き入れた。中には、表向き普通入学だが、実質「試験免除、学費免除」の者もいたらしい。 で、歴代メンバーの活躍で、不思議は潰されていったんだが、潰す度にまた一つ生まれる。それどころか、記録によると、一度潰しながらも、復活したものもあったそうだ。さっきも言ったが、その理由はわかってない。だから、いたちごっこ、って言ってしまえばおしまいだが、それでも不思議事件を潰さないよりはいい。 なんといっても、生徒が何人か意識不明になってるしな。 そんなわけで、この学校では「FACELESS」なる組織が、存在し、日夜、七不思議と戦ってるって訳だ。 もうわかるよな? この俺、二年A組・宇津(うづ)太牙(たいが)も、その一人だ。
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