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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア 作者:ジン 竜珠

第4回  
 その言葉に、アイ・スクリームの目つきが険しくなる。
「幹部コードックの祖国、サービ・シー・ランドは、五年前に滅んだ。クーキョンのふるさと、ムーナ・シー・ハイランドがあった大地は、七年前に崩壊した。そしてはるか北にあった私の故郷、クール・シー・アイランドは、十年前に海の底に沈んでしまったの! でも、ホープ・ジュエルが七つそろえば、その力で復活させられるのよ! その代わり、ファン・タ・シー・キングダムも、人間界も滅ぶけどね!」
 ナイトが剣を構えて、宣言する。
「そんなことさせない!」
「いい返事だわ、○リキュア。ゼツボーグ、やってしまいなさい。あなたたちを倒した後で、そのホープ・ジュエル、もらって、ア・ゲ・ル」
『ゼツボォォォォォォォォォグ!』
 ゼツボーグが雄叫びを上げる。アーチャーが弓を構え、矢を続けざまに放つも、頭に乗ったイチゴの表面の粒(実は、あれこそがイチゴの果実である)を飛ばし、ことごとく矢をはじいている。そして、ゼツボーグが右肩のゼリーを地面に流した。
 ナイト、クレリック、ウィッカはジャンプしてかわしたが、アーチャーは、弓で次の照準を定めていて、反応が一歩、遅れた。足下に流れたゼリーがあっという間に硬化し、アーチャーの脚を封じる。
「うそ、動けない!」
 驚愕するアーチャーめがけて、ゼツボーグが左肩のモンブランから栗の実を外し、投げつけた。正面からのものは両手ではじくことができるが。
 ゼツボーグが背後に回り込み、新しく生えてきた栗の実をアーチャーの後ろ頭に投げつけた。
 鈍い音、「あいたっ!」という悲鳴とともに、アーチャーが倒れる。もっとも脚が固められているので、膝から折れて、ブリッジに近い格好になっているが。
「アーチャー!? ……なんてことを!」
 怒りの声とともに、ナイトが斬りかかる。だが、ゼツボーグが栗の実を投げつけてきた。それを魔法弾で、ウィッカが破壊する。その爆煙をくぐって、ナイトがゼツボーグの頭に切りつける。だが、硬く、ダメージは少ないようだ。通常攻撃のダメージがあまり通らないゼツボーグは、シツボーグより難敵だった。それでも、体勢を崩すことはできた。
『ゼツボォォォォォォォォォグ!』
 吠えながら、ゼツボーグが栗の実を外す。すると、その身に周りに殻(から)が現れ、イガグリになった。それを地にたたきつけると、そのイガがミサイルのように、三人を襲った。
「いたいいたい!」
 悲鳴を上げる三人。クレリックが杖を光らせる。
「痛いの痛いの、Go Away!」
 この光におかげで、痛みは消えた。だが、イガはまだまだ飛んでくる。ゼツボーグに近づけない。イガをかわす三人。だが、このイガにはもう一つの意味があった。それに気づいたときには、三人は、密集陣形をとらされていた。
『ゼツボォォォォォォォォォグ!』
 ゼツボーグの左肩にあるモンブランのマロンクリームが紐状にほどけて射出され、三人をぐるぐる巻きにした。
 ナイトが苦鳴とともに言った。
「……しまった……! ……くっ、ほどけない……!」
 クレリックも、ウィッカも力を込めるが、ひもはきつく縛(いまし)めてくる。ゼツボーグの口がパッカリと開き、中にある三、四つのカットイチゴが赤い光を放ち始めた。あれを食らったら大ダメージだ。
 何を思ったか、おそらく力で無理ならと思ったのだろうが、ウィッカがひもにかみつき、かみちぎろうとした。次の瞬間。
「ナイト、これ、甘いよ!?」
「うん、わかってる! モンブランだからね!」
 ウィッカがステッキに魔力を込めて呪文を唱えた。
「ホ、ホ、ホータル、来い! コッチのみーずは、あーまいよっ!」
 ステッキの先端が光り、そこから、小さな光が無数に現れた。それはホタルに見えた。無数のホタルが、ひも、そしてアーチャーの脚を固めているゼリーに群がる。あっという間に、ひもとゼリーが分解されていった。
 ゼツボーグがカットイチゴを吐き出す。だがそれらはことごとく、アーチャーの放ったオレンジ色に光る矢に破壊された。
 ウィッカがバックルのブルー・アクアマリンを外す。
「希望の星はどこ?」
 捧げ持ったブルー・アクアマリンを通して、ゼツボーグを見る。ショートケーキのイチゴの中に、「それ」が輝いていた。
「あった、希望の星!」
「みんな、行くよ!」
 ナイトが号令をかける。
「我ら、いざ、夢を護らん!」
 その声に誘導されるように、クレリックの杖とウィッカのステッキが繋がり、それにアーチャーの弓が合体する。そして、ナイトの剣が先端に繋がると同時に、弓が白い翼になった。
 四人が宣言する。
「希望の光を取り戻せ! ○リキュア・フェニックス・スピアー!」
 宙に浮いた翼を持つ槍が一直線に飛び、ゼツボーグのイチゴを貫く。
 数瞬おいて、ゼツボーグが爆散する。
「夢と希望を、その胸に! ドント・ギブアップ・ヨア・ドリィィィィィィィム!」
 四人がそれぞれにポーズを決めた。

 どこで買ってきたか、スイーツを入れた袋を手にアイ・スクリームが言った。
「ちょっとお買い物に行ってたら……。まあ、いいわ、次があるもの」
 揚げパンを平らげ、指に付いた砂糖をなめながら、アイ・スクリームは姿を消した。


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