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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第90回   肆の七
 七月二十二日、土曜日。
 いつもは、昼の三時から定例会議。いつものように、御苑生さん、佐之尾主頭、面河さん以外のメンバーが集まっているんだけど。時間も巻き戻ったし、いろいろと検討しないとならないっていうことで、ちょっといつもと雰囲気が違ってた。
 でも、結論は出ず。高谷さんの言葉でも「卦が全く動かない。こんなことは生まれて初めて」だった。前回と全く同じ結果が出たらしい。
 要するに。
 僕たちではどうにもならないところで、事態が動いているらしい。
 副頭が、高谷さんに言った。
「例の魔修羅大公ですが。何か、わかりましたか?」
 高谷さんは、首を横に振る。
「水沢節(すいたくせつ)の初爻(しょこう)。今はまだ、我々の判断の埒外(らちがい)にあるようです」
「そうですか」
 と、副頭が腕を組む。
 その時、白倉さんがみんなを見渡してから言った。
「これは、ボクの推測だけれど、聞いてもらえるかな?」
 みんなの視線を受けて、白倉さんが言った。
「いろんな報告を総合してみると、過去二回のディザイアは、何者かによって『出現させられた』と思われる。ボクは会敵していないけど、山精(さんしょう)のディザイア、接敵していないけど、大蜘蛛のディザイア、いずれも、誰だったか、わかってる」
 それは、確認された。
「それでね? これは江崎さんや、佐之尾さんが、ご本人に確認したことで、まだ、みんなには伏せられているんだけど」
 と、白倉さんが、副頭を見る。副頭は頷いた。何かわからないけど、そこには、副頭が白倉さんに、全幅の信頼を寄せている雰囲気があった。
「村嶋氏と、合崎氏、いずれも、謎の女と出会っている。……冥空で、ボクが遭遇した、あの女たちだ。amoureux(アムール)や、救世くんも見てるよね?」
 ああ、あの時の、着物、着た女か。白い着物と黒い着物だったから、僕は勝手に「白黒」って呼んでるけど。
「警察病院にいるんで確認できていないけど、おそらく、石毛氏も、会っているんじゃないかな、あの女たちに?」
 いしげし? 誰、それ?
 千宝寺さんは、なんか知っているみたいな雰囲気だけど、僕たちが首を傾げたんで(天夢ちゃんは僕に小声で「誰ですか?」って聞いてくるし)、副頭が言った。
「この間の、イシュタムとかいうディザイア。あれを生み出した人だと、思われます。ただし、確定ではありません。多少、可能性がある、その程度です」
 すごいな、そこまでわかってるんだ!
 ふと浅黄さんが「ああ、石毛が、イシケで、ケイシーなんだ」とかって、呟くのが聞こえた。
 白倉さんが話を続ける。
「石毛氏は、どうかわからないけど、村嶋氏と合崎氏は、あの女たちに出会ったことで、大正十二年界へ行き、ディザイアとなった。つまり、あの女たちが、ディザイアを生み出したといえる」
 貴織さんが、「なるほど、そうかもね」と呟いた。
「あの女たちは、村嶋氏たちの話では、髪の短い方が『タイコウヒ』、長い方が『タイコウゴウ』と呼ばれているらしい」
 そして、立ち上がり、副頭の後ろにあるホワイトボードまで歩いて、板書した。


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