七月二十二日、土曜日。 いつもは、昼の三時から定例会議。いつものように、御苑生さん、佐之尾主頭、面河さん以外のメンバーが集まっているんだけど。時間も巻き戻ったし、いろいろと検討しないとならないっていうことで、ちょっといつもと雰囲気が違ってた。 でも、結論は出ず。高谷さんの言葉でも「卦が全く動かない。こんなことは生まれて初めて」だった。前回と全く同じ結果が出たらしい。 要するに。 僕たちではどうにもならないところで、事態が動いているらしい。 副頭が、高谷さんに言った。 「例の魔修羅大公ですが。何か、わかりましたか?」 高谷さんは、首を横に振る。 「水沢節(すいたくせつ)の初爻(しょこう)。今はまだ、我々の判断の埒外(らちがい)にあるようです」 「そうですか」 と、副頭が腕を組む。 その時、白倉さんがみんなを見渡してから言った。 「これは、ボクの推測だけれど、聞いてもらえるかな?」 みんなの視線を受けて、白倉さんが言った。 「いろんな報告を総合してみると、過去二回のディザイアは、何者かによって『出現させられた』と思われる。ボクは会敵していないけど、山精(さんしょう)のディザイア、接敵していないけど、大蜘蛛のディザイア、いずれも、誰だったか、わかってる」 それは、確認された。 「それでね? これは江崎さんや、佐之尾さんが、ご本人に確認したことで、まだ、みんなには伏せられているんだけど」 と、白倉さんが、副頭を見る。副頭は頷いた。何かわからないけど、そこには、副頭が白倉さんに、全幅の信頼を寄せている雰囲気があった。 「村嶋氏と、合崎氏、いずれも、謎の女と出会っている。……冥空で、ボクが遭遇した、あの女たちだ。amoureux(アムール)や、救世くんも見てるよね?」 ああ、あの時の、着物、着た女か。白い着物と黒い着物だったから、僕は勝手に「白黒」って呼んでるけど。 「警察病院にいるんで確認できていないけど、おそらく、石毛氏も、会っているんじゃないかな、あの女たちに?」 いしげし? 誰、それ? 千宝寺さんは、なんか知っているみたいな雰囲気だけど、僕たちが首を傾げたんで(天夢ちゃんは僕に小声で「誰ですか?」って聞いてくるし)、副頭が言った。 「この間の、イシュタムとかいうディザイア。あれを生み出した人だと、思われます。ただし、確定ではありません。多少、可能性がある、その程度です」 すごいな、そこまでわかってるんだ! ふと浅黄さんが「ああ、石毛が、イシケで、ケイシーなんだ」とかって、呟くのが聞こえた。 白倉さんが話を続ける。 「石毛氏は、どうかわからないけど、村嶋氏と合崎氏は、あの女たちに出会ったことで、大正十二年界へ行き、ディザイアとなった。つまり、あの女たちが、ディザイアを生み出したといえる」 貴織さんが、「なるほど、そうかもね」と呟いた。 「あの女たちは、村嶋氏たちの話では、髪の短い方が『タイコウヒ』、長い方が『タイコウゴウ』と呼ばれているらしい」 そして、立ち上がり、副頭の後ろにあるホワイトボードまで歩いて、板書した。
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