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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第89回   肆の六
 天夢が目を覚ますと、大正十二年界で天夢が世話になっている、「親戚」の家の部屋だった。
 体と頭が重い。思考力が鈍っている。
 しばらくして、頭が回り始めた。
 前夜、自分は強大な力を使った。頭と体が重いのは、その消耗のせいだろう。
 上半身を起こし、部屋の中を見回す。どうやら、時間が巻き戻ったらしい。ということは、魔災まで、まだ猶予があるということ。
 これまでのことで、わかっていたことだが。
 あの二体の魔怪は、片方を倒しても、もう片方が健在なら、意味はないようだ。前回、天夢は、前夜と同じように、全氣力・精神力を消費するような大技で、ケルベロスを倒せた。だが、大淫婦から黒球が発された気配を感じたと思ったら、ケルベロスの残骸から三つの黒球が飛び出し、大空震が起こった。
 千紗がいるときは、彼女がトホカミ結界を使うことで、どちらかを封じ、大空震を抑えたこともあったが。
 これは単純な考え方だ。
 二体の魔怪を相手にする護世士は、それなりに強くなければならない。となれば、新人といえども、レベルアップしてもらわねば。
 心が選ばれてしまうこともあるわけで、彼にもレベルアップしてもらわねばならないが。
 いきなり「レベルアップする」などいうことは、至難の業だし、過酷な行を毎日修める、というのも……。
 もし、そんなことをすれば、心の身に何が起こるかわからない。彼には、危険な目にあって欲しくない。まして、死ぬ、などということは、絶対にあってはならない。
「あの人は、あたしが護るわ……」
 呟いた声で、我に返ると、天夢は起き上がった。
 着替えながら、今日は何月何日だろう、と思った。


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