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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第84回   肆「分明なりしものども」の一
 上石津署刑事課、強行犯係、国見章由(くにみ あきよし)巡査部長は、上石津署刑事課、盗犯係の菱川(ひしかわ)巡査部長から話を聞き、菱川に連絡してきた、隣市・石津署の刑事課、知能犯係の有藤(ありとう)巡査部長から、話を聞いた。
 石津署で逮捕された特殊詐欺グループの男子大学生が、昨年殺害された、帝星建設社員、佐溝充政(さこう みつまさ)の財布を持っていたからだ。
 十九日水曜日、午後三時半、国見は、後輩の富部純佳(とんべ すみか)巡査を伴って、男子大学生が財布を拾ったという、上石津市の一エリア・青清木(せいせいぼく)にある九柳(くりゅう)公園、別名「ユーレイ公園」に来ていた。
 公園の東側には、幅が二十メートルほどの河が流れており、その河沿いに道がある。この道は、公園の外周部であり、中の遊歩道と組み合わさると、空から見たときに、まるで南北の辺が長い、長方形のユニオンジャック(英国旗)のように見えるという。道幅は、五メートルほどであるが、自動車の乗り入れは禁止されており、また物理的に進入できないように、柵が設けてあった。ただ、そのすぐ南側に、公園を訪れた者が利用する駐車場があり、便宜を図って、歩行者が駐車場から、その道に入って、公園に入ることは出来た。
 東側の道には、ほぼ七メートルおきに柳の木が植えてあり、そのあたりから「ユーレイ公園」とあだ名されるに至ったようだ。そもそもは、この公園を整備した当時、中途半端に風水に凝ったものが設立委員会におり、「東方に九本の柳を植えると、風水的にいい地相になる」ということで、九本の柳が植えられたという。ちなみに、地相的に良い、とかでほかにも「北にエンジュの木を六本植える」という計画もあったらしいが、スペース的に四本しか植えることが出来なかったそうだ。公園が出来て、十五年、今では、その木々が植えられている理由に興味を持つ者は、あまりいないだろう。
 男子大学生は、昨年の十一月、ある日の深夜(日付は覚えていなかった)、この公園に来て、ある柳の木の近くにあるクズかごの周辺に、ゴミが散乱しているのを見た。そして、興味を覚え、クズかごを覗いたら、その財布があったそうなのだ。
 現金は四万円ほど。キャッシュカードやクレジットカードなどがあったそうだが、下手に使うとアシがつくと考え、それらは処分、財布と現金のみを持って帰ったらしい。
「クズかごの周辺に、ゴミが散乱、か……」
 呟き、国見は考える。


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