「じゃあ、俺が占ってやろうか?」 「……え?」 予定調和が崩れた。 見上げると、面河は、何やら不敵な笑みを浮かべている。 なので、思わず言った。 「出来るの、占い……?」 言ってみてから、愚問だと気がついた。面河は、テイボウでは、最古参のメンバーだ。冥空裏界でその姿を見たことは一度もないが、どのようなスキルを持ち、どの程度の技量を持っているか、推し量ることは出来ない。 頷き、面河は出入り口の方を見た。 「次に入ってくるお客様が、男性だったら、潔く占いから身を引く。女性だったら、自分で答を探し続ける。どうかな?」 「なに、それ? 占いじゃなくて、ただの賭けじゃない」 「安倍晴明公の見通占(みとおしせん)なんか、『どの日』に、『どの方角』から来たかっていうのを観てるし、辻占(つじうら)も『耳に入った人の言葉で占断する』、だぜ?」 そう言われては、反論できない。 「いいな?」 どうせ、意味のない遊びのようなもの。そう思って貴織が頷くと、直後、ドアベルが鳴った。客が入ってきた合図だ。 一瞬で、体が強ばる。やはり、気になるのか? 面河が、その方を見る。だが、貴織は怖くて、振り返ることが出来ない。うつむき、客の第一声を待つ。 だが、それより先に、面河が言った。 「いらっしゃいませ。……そうだ、お客様。お客様が先日言ってらした話、この方に相談なさっては?」 と、貴織に手を差し出す。 なんだろう、と思っていると、面河は貴織を見て言った。 「この人、『フォーチュナー・ハウス』っていうところで、占いをしてるんです。よく当たるって、評判ですよ」 面河が笑顔で、ウィンクする。 思わず、振り返り、その客を確認すると、驚きともなんとも言えない気持ちを抑えて、貴織は言った。 「あたし、タロットカードなんだけど、いいかしら? ああ、見料なら……そうね、ここのバーテンダーに請求するから、いいわ」 面河が苦笑交じりに「おいおい」と呟くのを聞きながら、貴織は思った。 自分のアタッキングツールがカードになっているのは、自分の心と向き合え、そう言われているのではないか、と。
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