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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第60回   弐の三十
 僕は、右脚に「氣」を集める。そして、近くの家に駆け寄り、ジャンプして壁を蹴り、ジャンプ台にする。
 女神が剣で応戦している隙を使い、あの紐を、蹴り砕く!
 僕の右脚が、ディザイアの首に迫った瞬間!
 突然、衝撃が僕を貫いた。
 なすすべもなく、僕は地に叩きつけられ、ボロクズのように転がった。
 苦鳴ともに、起き上がる。なんとか片膝をついて、見上げると、七、八メートル先に、特撮物に出てくるようなデザインの、黒い鎧兜に見を包んだ、あの時の影。
「お、お前……!」
 苦しい息で、どうにかそれだけ呟く。痛む胸(多分、胸に何らかの衝撃が加わったんだと思う)を押さえ、どうにか立ち上がった。
 鎧兜の男は、腰の日本刀を抜き、電子的な声で言った。
『今日は間に合った。この者、必ずや、護る!』
「護る?」
 電子的な声だけど、多分、男だ。
 武者は頷いた。
『先日は、私が出遅れたが故に、あの者たちを救うことが出来なかった。だが、今宵は、この命にかえても!』
 先日? もしかして、あの大蜘蛛のディザイアか? 護るとか救うとか。……まさか、ディザイアを護るディザイア? 天夢ちゃんがそんな感じの報告をして、その時はまさかと思ったけど。
 その行動理念がよくわからないけど、敵であることに変わりはない。
 僕はファイティングポーズを取る。
 武者が斬り込んできた。しかし、僕に届く直前で何かが現れて、金属音とともに、それを弾いた。
「白倉さん!?」
 それは、白倉さんだった。手には、反り返った刃の、一メートル近い太刀がある。
「救世くん、ここはボクに任せてくれ! キミは、ディザイアを!」
「え? でも」
「原理はわからないけど、ディザイアを倒せるのは、勾玉に選ばれた者だけなんだ。言い換えたら、勾玉にはディザイアを倒す力がある。今、その力を手にしているのは、キミなんだよ!?」
 今、ディザイアを倒せるのは、僕だけ。
 僕は女神と闘っているディザイアを見た。
 あのディザイアの目的は「人を自殺に追いやること」。なんで、そんな欲念を持っているのかは、わからない。
 でも、こいつを野放しにしたら、現実世界で、多くの人が自殺していく。それも、歓喜をもって。
 それを認めることは、断じて出来ない!


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