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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第58回   弐の二十八
 その呟きに、僕の隣に来てた天夢ちゃんが言った。
「いしゅたむ? なんですか、それ?」
「マヤで信仰されてた神様だけど、首吊りの神様なんだ」
 天夢ちゃんだけでなく、その話が聞こえていたらしい貴織さん、浅黄さんが、ギョッとなる。
 僕は、簡単に説明した。
「理由はわからないけど、マヤでは首を吊って死んだ人間は、イシュタムっていう女神に連れられて、楽園へ行けると考えられていたらしいんだ」
 千宝寺さんがちょっと考えて、「それで、か」って呟いてた。僕もなんとなく、ディザイアがこの姿をしてる理由が、わかったような気がした。
「それにしても、大正十二年界って、なんでもありなんですね。ディザイアの姿形とか、マヤ神話に由来する、なんて」
 僕が、そういうと、浅黄さんと貴織さんが、なんか微妙な表情になった。そして、浅黄さんが言った。
「帝浄連時代の話なんだが。当時のメンバーが、うっかり口を滑らせてしまったらしい」
「口を滑らせた?」
「ああ。『日本もマヤ・アステカも、太陽神を最高神として崇めてるところが、似てる』みたいなこと」
「へえ……」
「その時に、『変質』が起こったらしくてな。おまけにそのメンバー、世界各地の神話とか妖精とか、妖怪に詳しくて、『同じ存在が、国により時代によって、呼び名がかわっているだけ』みたいなことを言ったらしい。滅多にあることじゃないんだが、その影響で、禍津邪妄や、ディザイアの姿形が、いろんな国の妖精とか、妖怪とかの姿をとるようになったらしい」
 ……うわあ、ピンポイントな表現っていうか、考え方っていうか。
 僕は恐る恐る言ってみた。
「そのメンバーって、救世晃佑(くぜ こうゆう)とかって、いったりしませんか?」
「ん? ああ、確かそんな……。……あ」
 何かに気づいたように、浅黄さん、貴織さん、天夢ちゃんが僕を見る。
 僕は。
「申し訳ありません」
 頭を下げるしかなかった。


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