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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第54回   弐の二十四
 冥空では八月二十七日、月曜日だった。
 十五日、土曜日の午前一時前だったんだけどな、顕空じゃあ。
 まあいいか。
 僕は辺りを見渡した。知らない場所じゃない。お日様が中天にあるから、お昼頃か。
 とりあえず、帝都文明亭へ、と思っていたら、見知った顔に出会った。
「梓川さん」
 僕の声に、角を曲がってきた梓川さんが笑顔になる。
「あら、救世くん」
 そして、僕に近寄り、こう言った。
「そろそろ、貴織、でいいわよ。同じ、アタッキングメンバーなんだし」
 そして、イタズラっぽく笑う。
「そうですか。それじゃあ。……貴織さん、もしかして、これから、帝都文明亭ですか?」
 角を曲がってこちらへ来た、ということは、高確率で帝都文明亭へ向かっているんじゃないか、と思って、僕は聞いてみた。
「え? え、ええ……」
 貴織さんが、ちょっと、困惑したような笑みで、目を逸らす。
 ? なんか、変な反応だな?
 でも、特に気にすることもないんで、僕たちは連れだって、歩いた。
 そして、到着すると。
「あれ? 『本日、都合により休店。ご容赦願い候』。なんだ、休みか」
 なんか、臨時休業の貼り紙がある。
「大丈夫よ、救世くん」
 僕の落胆に構わず、貴織さんはドアを開ける。いつものように、ちょっとだけ、きしむような音を立てて、ドアが開いた。
「え? 休業なんじゃあ……」
 貴織さんが中に入ったんで、僕も中に入った。すると、中には、天夢ちゃん、千宝寺さん、浅黄さん、紫雲英ちゃんがいて、適当な位置に置かれた椅子に座っていた。
「珍しいですね、アタッキングメンバーが、全員揃ってるなんて」
 これまでの経験だけど、多くて五人なんだ、同じ時間にアタッキングメンバーがこっちに来るの。もっとも、会えないだけで、全員、揃っているときもあったのかも知れないけど。
 浅黄さんが、困ったような顔で言った。
「いや、まあ、なんていうか、な」
 ? 歯切れ悪いな?
 僕が詳しく聞こうとしたとき、ドアが、轟音とともに、開け放たれた。
 驚いて、振り返ると、そこには、一人の人物。クリムゾンの長袖のブラウスに(もっとも、袖は肘のところまでまくり上げてるけど)、レモンイエローのネクタイ。白いプリーツスカートには赤と青のオーバーチェック。黒いオーバーニーソックスに、ブラウンの革靴。ブラウスの左胸には、記章っていうか、学年章みたいなものがあって、なんかのシンボルマークと一緒に「UA」って書いてある。どこかの学校の制服か。髪はウルフヘアーっていうんだっけ、えり足はもっと長いけど、あんな感じ。顔つきは、猫っぽい感じで、間違いなく美少女だと思う。僕より、五センチぐらい低いかな?
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