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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第53回   弐の二十三
 国見と別れ、市営駐車場へ向かう途中、江崎はふと、人の世の縁(えにし)の不思議さに思いを馳せていた。
 意識不明者のリストの中に、警察病院にいる、石毛晴幸の名前があった。そして帝星建設事件の横領犯は、小金井晴幸。事件関係者の中に、石毛建設設計社長・石毛清彦の名前。関係があるかも知れないと思い、調べると、裁判中には、晴幸の名前は石毛になっていた。石毛晴幸は現在、意識不明、その理由は国見によれば、自殺未遂。
「石毛(いしげ)……イシケ……ケイシー。ふざけた連想だ」
 ディザイアのやっていることは、自殺教唆。もしかすると、今回のディザイアは石毛晴幸かも知れない。
 さらに、矢南徹明の調査を依頼した人物。さっきは名前を出さなかったが、実は聞いている。小金井奈帆(こがねい なほ)、晴幸の元・妻だ。これが何かで繋がるのかどうか、わからないし、まったく関係ないかも知れない。まあ、このあたりは、警察が、調べることであって、自分たちテイボウのすることではない。
 ディザイアを消滅させたら、霊的に干渉し、晴幸の自殺願望を消さねば、また同じようなディザイアが生まれる怖れがある。だが。
「四ヶ月前の、強盗被害者の恨みの念は、大正十二年界で、強盗犯と同じ『元・教師』の『男性』の、『左脚』をへし折る、というディザイアになった。事件の際に左脚を骨折させられ、アスリートへの夢を諦めた無念は、簡単に消えるものじゃない」
 そのディザイアは、倒した二ヶ月後にも出現したのだ。
 ふと、自分たちのしていることに意味があるのだろうか、という疑問が浮かんだが。
 そんなものを気にしていては、無力感にさいなまれるだけなので、頭を振るようにして、そんな思いをはらい、江崎はとりあえず目についた自動販売機で、紅茶のペットボトルを買った。


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