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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第40回   弐の十
 僕の言葉に、天夢ちゃんも苦笑いで言った。
「あたしもです。友だちから『頭が良くなるパワーグッズ』て言われて、一緒に買っただけなので。でも、救世さん、よく知ってましたね、ケツァルコアトルのこと」
「爺ちゃんがさ、『禍津邪妄はどんな奴がいるかわからん。世界各地の妖怪の知識を持っておいた方がいい』とかで、いろいろと勉強したらしいんだ。昔は今ほど情報が豊富じゃなかったから、データ集めに苦労したらしいけど」
 で、まあ、僕も小さい頃からいろんな神話とか、妖怪の話とか、聞かされて育った。一時期はいろいろとゴッチャになってしまって、イギリスのバンシーっていう、人の死を「泣くこと」で予言する女妖精と、古事記に出てくるナキサワメっていう、妻を亡くして泣いた、伊弉諾尊の涙から生まれた女神様が一緒のものだって思ってた。これに限らず、.世界各地には、見た目だけじゃなく、特質とかが似た妖怪が多いんだよね、中国の布妖怪と日本の一反木綿とか、イギリスのケットシーと日本の猫股とか。
 まあ、爺ちゃんに言わせると「同じ存在が、国により時代によって、呼び名がかわっているだけ」らしいけど。
 そんな風に話をしながら歩いていると、二十メートルぐらい先に、バス停が見えてきた。すると、そこに天夢ちゃんと同じ制服の、背の高い……百七十センチの僕と同じくらいかな……ショートカットの女の子がいた。リボンの色はブルー。学年も同じだ。
 その女の子がこっちを見て、天夢ちゃんに笑顔を向け、手を振る。知り合いだったか。でも、僕に気づいて、その表情がちょっとだけ、強ばった。
 それがちょっと気になったけど、僕は天夢ちゃんに向いた。
「知り合い?」
「え? ええ……」
 あれ? なんか、天夢ちゃんも歯切れが悪いな。でも、最初、あの女の子は笑顔でこっちに手を振っていたから、天夢ちゃんと仲が悪いって訳じゃないと思うけど?
「あの、救世さん。有り難うございました、楽しかったです!」
 そう言って、天夢ちゃんはバス停の方に駆けて行った。
 僕がバス停に近づく頃には、バスが来て、二人はそれに乗っていった。
 あの女の子、僕の方を見て、天夢ちゃんに何か言ってたけど、聴き取ることは出来なかった。


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