禍津邪妄は、顕空現界……現実世界の人々の邪念が、何らかの形になったものだっていう。詳細なシステム……ていうか、どうしてそうなるのか、ていう仕組みはよくわかってないらしいんだけど、魔災の原因の一つは顕空の人たちの邪念で、それが蓄積されると、現実世界の東京で災いが起こるらしい。それが溢れるほどに蓄積されると、魔災に繋がるっていうことで、ある種の呪術を仕掛けて、邪念が蓄積する前に、それを「解消(クリア)」するようになっているという。 しかし、完全には「解消」出来なくて、時々、一部が実体化するのだそうだ。それが、「禍津邪妄」。いわば、帝都を騒がす怪人、ってところだろうか。 黒い腕は、ところ構わず殴って、壁を崩したり、柱を折ったりしている。 このままじゃ、被害が広がるばかりだ。いくら九月一日午前零時になったら時間とか巻き戻って、それまでのことが(大体において)なかった事になるとはいっても、それまではやっぱりここは「存在」する。なんとかしないとならない。 そう思っていたら、紅く染まった夕空から、何かが降りてきた。 金と銀の勾玉だ。 そして、金の勾玉は梓川さん、銀の勾玉は浅黄さんのもとに降りてきた。 「……あれ?」 僕が首を傾げたんで、天夢ちゃんが言った。 「どうしたんですか、救世さん?」 「え? ああ、この間、浅黄さんのところには金色の勾玉が降りてきたんだ。でも、今は銀。なんでかな、って思って」 先日のディザイアの時は、浅黄さんが金色の勾玉、一緒にいた紫雲英(れんげ)ちゃんのところには銀色の勾玉が降りた。 天夢ちゃんが一度、浅黄さんたちを見てから、言った。 「あたしたちにも、詳しいところはわからないんですけど。金の勾玉は物理力……物理的攻撃力、銀の勾玉は意念力……呪力が、強化される傾向にあるようです。その際、誰に何が降りるのかっていうのは、本当にわからないんですけど」 「そうなんだ」 なんか、どうにも不思議な法則がある、と解釈するしかないようだ。
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