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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第271回   終結の部の三十七
 おそらく、決着は短時間でつく。
 気合いとともに、猿太閤が踏み込んだ。その穂先をいなし、身を翻して、斬り込む。だが、猿太閤も、それを読み、間合いをとった。即応し、突きを放つ新を、どうにかかわし、猿太閤は槍の柄で新に殴りかかる。
 それを、前のめりに飛び込み、前転、その勢いで、立ち上がり、そのまま横っ飛びに飛ぶ。そこを、槍が突き抜けていった。
 そして。
 身をひねり、姿勢を低くし、猿太閤の腰めがけて突きを放つ。身をひねり、それをかわそうとした猿太閤だったが、急には対応できず、よろけた。突きこそかわしたものの、槍を構えることさえできない。
 その隙をついて。
「セイヤァッ!」
 気合い一閃、踏み込んで、下から大光世を振り上げる。
 その刃は槍を二つに斬り、猿太閤の胸を斬り裂いた! そのまま脚に氣を溜め、地を踏みつけて、跳躍した。
「猿太閤、斬滅!」
 脳天から、縦一文字に猿太閤を割る。
 猿太閤の見開かれた目が、ギョロリと、新を見据える。そこに宿るのは、怨念の極。
『……ホロビヌ、ホロビヌゾォォ! ワレハ、ケッシテホロビヌ! カナラズヤ、ヨミガエリ、コノエドヲ、コノ穢土ヲ、ホロボ……』
「天地に十字あり!」
 新の八方、そして、下に「臨兵闘者皆陣列前行」の咒字が現れ、頭上に輝くのは、「神」の文字。
 そして氣を込め、大光世で、猿太閤の首を跳ね飛ばした。
 その頭部が地上に落ちたのと同時に、猿太閤の頭も体も、光と轟音とともに爆発した。
 爆風と衝撃波で、新は、軽く百メートルは飛ばされたが、「ヨロイ」の防護力でダメージはなかった。
 ただ、うまく着地が出来なかったのと、痛かったのは残念だ。
 起き上がり、猿太閤がいた屋根の方を見る。そこから異様な濃度の、目に見えぬ「闇」が、空へと吸い込まれた。
 直後、何かが「圧縮」「解凍」する感覚が起き、暗転して「夜」になった。
「八月三十一日か」
 呟くと、彼方に、巨大な金と白い影が立ち上がる。
 それは、一つの頭を持った巨大な白い犬。そして、その尻尾の方に、九つの頭を待つ金色(こんじき)の龍。
 緊張感とともに、新は、大光世を構え、「氣」をチャージする。しかし。
「……! これは……!」
 意識が研ぎ澄まされたからか、あるいは、勾玉のことを理解したからか、様々な情報が流れ込んできた。それが、以前からおぼろげに推測していたことと、持っていた知識、そして、今、感じたことをつなぎ合わせる。それは、まるで、一枚のパズルが完成したときのような、清涼感を、新の脳髄に与えた。
「やはり、『九』と『一』は……」
 呟いた直後、「ヨロイ」が解除された。
 だが、それは、世界の選択ではなく、また新に不安をもたらすものでもない。
 新は、ある方向を見て、呟いた。
「キミに任せたよ、救世くん」


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