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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第269回   終結の部の三十五
 僕が金色の勾玉を掴んだとき。
『救世!』
 空から声がした。それは、「トホカミ結界」を作るときに、千宝寺さんから届く声と同じものだった。見上げると、はるか上の青空に浮かぶ、トホカミ結界。結界が回転し、収束し、眩い銀色の、光の球になった。その球が、僕めがけて、すごいスピードで降ってくる。その銀の光に向けて、僕はキーワードとともに、金色の光をまとった右の拳を撃ち出した。
「真鎧纏装!」
 拳と光がぶつかるのと同時に、僕の中から、氣と光と力が噴き上がった。
「ヨロイ」をまとった僕は、巨人を見上げる。
 巨人も僕を見下ろす。数瞬、置いて、僕は回り込むようにダッシュした! そして、円盤を左手甲に、勾玉を右手甲にセットする。そして、まずは、ヤツの「足」を封じる!
「兌の掌(しょう)!」
 両手に「川の流れ」の力が現れる。制動をかけて止まり、その両手を地面に置く。ヤツの足もとが流動体になった。
「おおうッ!?」
 うろたえたような声が、上からした。
「おのれッ!」
 ダイダラボッチが右手をパンチにして、落としてくる。僕は。
「艮の打(だ)!」
 まるで「山」のような力が生まれたのを感じながら、その力を両手の平に集め、それで、ヤツのパンチを受けた。そして、そのまま押し返す。なすすべもなく山崩れに流されるように、右手が崩れながら押し戻され、姿勢を崩して、ダイダラボッチが仰向けに倒れる。地響きとともに、砕けた地面の欠片が舞い上がり、さらに流体と化していた地表に呑み込まれたように、ヤツの体が沈んだ。
 僕はジャンプし、ヤツの腹に跳び乗る。そして、拳を打ち込もうとしたら、ヤツの左手が僕を掴んだ。
 ……苦しい。骨が軋み、砕けそうだ。
 僕は意識を集中する。
「離の体(たい)!」
 全身がマグマのような炎に包まれ、周囲に膨らむ。猿太閤の苦鳴とともに、僕を掴んでいた左手が溶ける。
 ヤツの腹の上に降りた僕は、右拳に意識を集中した。
「震の拳(けん)!」
 雷をまとわせた右の拳を、ヤツの腹に撃ち込む。そこを中心として、雷撃が走り、ダイダラボッチの体に、光でヒビが走る。
「おのれおのれッ!」
 そんな声とともに、ダイダラボッチの体が崩れた。次の瞬間、何かが飛び出してくる。それは、細長い棒……棍、というより、如意棒を手にした孫悟空。僕は崩れかかるダイダラボッチから離脱する。
 宙でトンボを切り、着地したところへ、猿太閤が如意棒を振り下ろした。
 それを、すんでのところでかわし、地上でステップを踏んで、姿勢を低くした。そのまま、手で地を打ち、横飛びに飛び、そこで体勢を整え、僕はキーワードを唱えた。
「巽の刀(とう)!」
 右手を手刀にし、そこに風をまとわせる。
 猿太閤が打ち込んでくる如意棒を風の刀で受ける。でも、僕は剣道はよくわからない。何度か打ち合い、時に切り込み、時にかわすけど、お互い、ダメージを与えられない。
 しばらく打ち合って、猿太閤に隙ができた。僕は巽の力を消し、次のキーワードを唱えた。
「坤の鉤(こう)!」
 鉤(かぎ)のようにした左手で、生まれた「地」の力を、空気中から引っかけるようにして猿太閤にぶつける。そして、そのまま、回り込み、「地」の力で猿太閤を封じ込めた。
 猿太閤が、その戒めを振り払おうと、気を高めるけど、その暇を与えず、僕は次のキーワードを言った。
「坎の突(とつ)!」
 右手に生まれた「水」の力を収束させ、高圧の放水の如く、僕は右の貫手で、猿太閤の腹を打ち、空高く舞い上げた。
「乾の脚(きゃく)!」
 乾……「天」の力を全身に満たし、僕はジャンプした。そして猿太閤よりも高く飛び、ヤツに必殺の蹴りを食らわせた!
 轟音が響き、猿太閤が炸裂する。でも、完全に爆発したわけじゃなく、体そのものは、どこかに吹き飛んだようだ。その衝撃で、結界が壊れる。
 着地した時、見上げたけど、猿太閤がどこへ行ったか、わからなかった。
 でも、不思議と不安はなかった。


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