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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第259回   終結の部の二十五
「……オヤノ、くん、だったか? そのロードインデックスとかいうのに『110』っていうの、あるか?」
 一瞬、きょとんとなった小谷野だったが。
「ええ、ありますよ、110」
 頭の中で、検索された「110」と、今の「110」。もしかしたら一致するかも知れない。
 そう思いながら、佐之尾は、デスクの引き出しから、津島の「手紙」の一ページ目の写しを見せる。
「この、一行目の『RO 110 Fr BPP』の部分、タイヤに当てはめると、どうなる!?」
 佐之尾から紙を受け取り、小谷野は言った。
「Rはright、右、かな? O(オー)は、outside、車体につけたとき、外側を向く面っていうことでしょうね。110は、ロードインデックス。Frとか、BPPは……。これはちょっとわからないですねえ」
 佐之尾は小谷野に「有り難う。ちょっときてくれ!」と言って、すぐに部屋を飛び出した。そのあとを小谷野、片岡が追いかけてくる。
 行った先にあるのは、押収した津島の自家用車。
「小谷野くん、110のタイヤって、わかるか?」
 小谷野は、右側のタイヤを見て、言った。
「ああ、後輪が110ですね。前輪は108なのに。多分、この車、本来は108がついてたんだと思いますよ?」
 佐之尾はしゃがみ込んでタイヤを見る。
「『右』のoutside、『外側』……」
 ホイールキャップがある。どことなく「規格が合わないのに、無理矢理はめ込んだ感」があった。なので、外してみる。
 どうやら接着剤を使って、はめ込んだようで、外すのに難儀したが。
「……これは。ボールペン?」
 キャップの裏側に、一本のボールペンがクラフトテープで貼りつけてあった。
「なんだってこんなもの……?」
 わけがわからない。見てみるが、普通のボールペンのようだ。何かが仕込んであるようでもない。
 しかし、こんなところにあるということは、何か意味があるはずだ。
 じっと見ていると、片岡が、「ちょっとすみません、見せてもらえますか?」と言った。なので、渡す。
 しばらく見て。
「ああ、これ、フリクションですよ」
 と言った。
「なんだ、それ?」
「フリクションって、特殊なインキが使ってあって、書いた後に、ペンについた『消しゴム』で消すことが出来るんです」
「インクを消せる、フリクション……」
 ボールペンは英語では「Ball Point Pen」という。つまりは「BPP」。そして「Fr」は「スペルは『fr』から始まるんだろうな……」。
 考えているうちに、佐之尾の頭の中でいろいろと繋がってきた。
 ペンを取り、思わず駆け出す。
「ちょ、ちょっと、警部!」
 片岡の声が追いかけてきた。

 証拠品保管室に行き、津島の貸金庫から見つかった「日記」を出す。保管係が「なにする気ですか?」と、首を傾げている。もし自分の推理が正しいとしたら。
 佐之尾は、保管袋から「日記」を出した。そして、意を決し、ペンについたラバーで、「手紙」をこする。
「ああーっ!? 何やってるんですか!?」
 片岡と保管係が、口々に狼狽の声を上げる中、佐之尾は自分の推測が正しかったことを確信した。
「日記」の文字がみるみる無色に変わっていく。その中で、色が変わらず、残る文字があった。それを拾うと……。


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