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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第257回   終結の部の二十三
 鎧武者のディザイアが消滅し、結界が解除されたたとき。
 天夢ちゃんが言った。
「救世さん、あたし、間違ってました。あたしは、ただ、自分の罪を、贖罪の想いを救世さんに押しつけようとしてただけだったんです」
「天夢ちゃん……」
「そのことはわかってるつもりだったし、言葉にも出しました。でも、本当に理解しては、いなかった」
 そして、晴れ晴れとした笑顔で言った。
「救世さん、ごめんなさい! 救世さんは救世さん、あたしの『お兄ちゃん』じゃないんです」
「わかってくれたんだね」
 僕の心が温かくなる。
 こんな美少女に想いを寄せられるのは、嬉しかったけど。
 でも、それは「本物」じゃないしね。
「はい。だから」
 と、天夢ちゃんが、夜目にもわかるほど、頬を紅くして言った。
「改めて、お願いします。あたしと、一緒の時間を過ごしてください!」
「……え? 天夢ちゃん、ちょっと待って? なに、言ってるの?」
「いや、あの」
 と、天夢ちゃんは、もじもじとする。
「なんていうか、あたし、気持ちを切り替えるの、そんなに得意じゃないんです。一度、救世さんのことを意識したら、もう、止まれなくなってて。だから」
 と、上目遣いで僕を見る。
「あたしとおつきあいしてください」
「……え、と?」
「こう言ったら、あれですけど。あたし、紫雲英ちゃんに負けない自信、あります! お料理は、勉強中だけど、お裁縫とか、アクセサリー作りとか、剣道とかだったら、負けません!」
「いや、剣道は関係ない、っていうか、天夢ちゃん、何言っているか、わかってる?」
「救世さん、あたしのこと、奪ってください!」
 そうだった。天夢ちゃん、思い込んだら必死だって、話、聞いてて、思ったんだった。
 これは。
 貴織さんに相談……。
 駄目だ、あの人は頼りにならない!
 じゃあ、千宝寺さんに……。
 そう思った瞬間、天夢ちゃんが僕に抱きついて、いや、しがみついてきた。
 ちょっと、苦しかった……。


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