鎧武者のディザイアが消滅し、結界が解除されたたとき。 天夢ちゃんが言った。 「救世さん、あたし、間違ってました。あたしは、ただ、自分の罪を、贖罪の想いを救世さんに押しつけようとしてただけだったんです」 「天夢ちゃん……」 「そのことはわかってるつもりだったし、言葉にも出しました。でも、本当に理解しては、いなかった」 そして、晴れ晴れとした笑顔で言った。 「救世さん、ごめんなさい! 救世さんは救世さん、あたしの『お兄ちゃん』じゃないんです」 「わかってくれたんだね」 僕の心が温かくなる。 こんな美少女に想いを寄せられるのは、嬉しかったけど。 でも、それは「本物」じゃないしね。 「はい。だから」 と、天夢ちゃんが、夜目にもわかるほど、頬を紅くして言った。 「改めて、お願いします。あたしと、一緒の時間を過ごしてください!」 「……え? 天夢ちゃん、ちょっと待って? なに、言ってるの?」 「いや、あの」 と、天夢ちゃんは、もじもじとする。 「なんていうか、あたし、気持ちを切り替えるの、そんなに得意じゃないんです。一度、救世さんのことを意識したら、もう、止まれなくなってて。だから」 と、上目遣いで僕を見る。 「あたしとおつきあいしてください」 「……え、と?」 「こう言ったら、あれですけど。あたし、紫雲英ちゃんに負けない自信、あります! お料理は、勉強中だけど、お裁縫とか、アクセサリー作りとか、剣道とかだったら、負けません!」 「いや、剣道は関係ない、っていうか、天夢ちゃん、何言っているか、わかってる?」 「救世さん、あたしのこと、奪ってください!」 そうだった。天夢ちゃん、思い込んだら必死だって、話、聞いてて、思ったんだった。 これは。 貴織さんに相談……。 駄目だ、あの人は頼りにならない! じゃあ、千宝寺さんに……。 そう思った瞬間、天夢ちゃんが僕に抱きついて、いや、しがみついてきた。 ちょっと、苦しかった……。
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