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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第24回   壱の二十二
 顕空での翌日、つまり七月八日土曜日の午後八時。
 僕、浅黄さん、紫雲英ちゃん、梓川さんは、本部にいた。江崎副頭がホワイトボードに「迫水法螺無」と板書する。
「非常に変則的ではあったんですが」
 と、十センチ角程度の大きなマグネットシールを、何枚もボードに貼りつける。一枚一枚にアルファベットが一字ずつ書いてあって、「SAKOMIZU HOURAMU」となっていた。
「連絡を受けたとき、やっぱり気になったんです。意識不明者の二人、無関係ではありませんでしたし、冥空裏界でも、合崎と迫水両名、何らかの繋がりがあるようですし。なので、もしやと思い、アナグラムだと解釈してみました」
 そして、マグネットシールを並べ替える。
「MURASHIMA KOUZOU」となった。
「迫水法螺無は、村嶋康造氏です」
 副頭が強い口調で言った。
「じゃあ」
 と、浅黄さんが厳しい目つきで言った。
「山精は、あの教会に逃げ込んだのか。……ぬかったぜ」
 そのあとを、呆れたような口調で梓川さんが続ける。
「『法螺(ホラ)が無い』ってこと自体が、大法螺じゃない」
 紫雲英ちゃんが言った。
「今度、あっちに行ったら、問答無用で、踏み込んでもいいッてことですね?」
 苦笑いを浮かべて、副頭が答える。
「その言い方には語弊がありますが、ある程度、強権を発動してもいいでしょう」
 結論は。
「迫水法羅無をディザイアと認定する」だった。
 呪符が反応すれば、という、ただし書き付きだけど。

 そして、その夜のうちに冥空裏界へ行った。
 八月二十八日火曜日の、午後四時半だった。
 もう、本当にどうなっているのか、わからない。
 僕は、家を出て、例の教会へ行ってみたんだけど。
「……どうなってるんだ?」
 そこは、更地になっていた。建物を解体した痕跡もない、本当にただの空き地。それとなく、その近所の人たちに聞いてみたけど、そこはずっと空き地だったっていう。さりげなく「天空化神教」の名前を出してみたけど、無反応だった。
「本当に、どうなってるんだ?」
 訳がわからない。首を傾げながら、うんうん唸っていると。
「救世さん」
「天夢ちゃん」
 女学生姿の天夢ちゃんが、いた。
「教会が消えてるんだ。それだけじゃない、誰も化神教の事を知らなくて」
 僕が言うと、天夢ちゃんが言った。
「おそらく、『なかったこと』にされたんだと思います」
「え? どういうこと?」
 天夢ちゃんが、空き地を見ながら、言う。
「あたしも、詳しくは知らないんですけど。ディザイアによっては、何らかの事情で、一時的に『撤収』するんだそうです。その際、その痕跡をなかったことにするらしいんです」


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