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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第235回   終結の部「帝都、貫く、浄魔の拳!」の一
 八月八日、火曜日。午前十一時。
 国見章由巡査部長は富部純佳巡査を伴い、中埜石市にある県警本部へと赴いた。
 強行犯係係長・古瀬秋恵警部補が事前に連絡していたこともあり、県警捜査一課・佐之尾常国とはすぐに会うことが出来た。
「お久しぶりです、佐之尾警部」
「そちらも元気そうで。先日はお世話になりました」
 お互い、笑顔で握手を交わす。
 佐之尾が言った。
「古瀬さんから聞きましたよ。須ヶ原の野郎が、管理官で行ってるそうですが」
「ええ」
 と、国見は苦笑が浮かぶのを禁じ得ない。前夜の捜査会議は「結果ありき」のふざけたものだった。国見の後ろの席に着いていた刑事が、「月夜ばかりと思うなよ?」と呟くのが聞こえたが、同感だ。
 佐之尾も苦笑いを浮かべる。
「あのバカは気にせず、存分に捜査してください。誰かに何か言われたら、『捜一の佐之尾に言いにこい』とお伝えいただければ」
 心強い言葉だ。国見と純佳は一礼する。
 二人は佐之尾に勧められるまま、応接のソファに座る。
「ところで、須ヶ原が妙な圧力をかけた理由ですが」
 と、佐之尾が言った。
「あいつ、県議会議員の土原満武と繋がってるんですよ」
「県議と?」
 にわかには理解できない話だ。内容が、ではなく、なぜ、佐之尾がそんなことを言ったか、が、である。
 佐之尾が両手を組み、言う。
「中埜石中央駅前の再開発事業っていうのがあるんですが」
「ええ、県内ニュースで、ちょくちょく聞いています。本格的に動き出すのは、この十月からだ、とか?」
「それに対して、強い影響力を持ってるんですよ、土原って」
 純佳が「へえ」と相づちを打つ。
「その再開発事業を一手に引き受けたのが、上石津市の帝星建設」
 国見が頷く。
「そうでしたね」
「今はまだ、チラホラ、って感じなんですが。土原と帝星建設が癒着してる、有り体に言って、土原の『働きかけ』で、帝星建設が再開発の権利を手にした、っていう噂があります」
 そんな噂は初耳だ。確かに、中埜石市の大事業なのに、上石津市の業者が権利を獲得したのを、訝しむ声が、あるにはある。だが、帝星建設は県内最大のゼネコンであり、また、県随一の企業だから、不自然ではなかった。
「そんな議員と繋がりのある警察官が、『殺人事件』を『自殺』だと言い張っている」
 佐之尾の言葉に、国見と純佳は、顔を見合わせた。


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