その方を見ると、制服姿の白倉さん。 腰には鞘、右の手には、抜き身の大光世。その姿に心強さを感じたとき、白倉さんが踏み込み、大光世で、次々に武士を斬っていく。武士たちも刀を振り上げるけど、そもそものスピードが違う。それに、白倉さんの動き、無駄がない。何々流っていうのはわからないけど、明らかに実戦向けに練られた動きだ。特に相手の刀をいなしたり、たたき落として、そのまま斬り込む動きは、まるで稽古か、時代劇の殺陣を見ているかのような見事さだった。 瞬く間に武士たちは消え去った。あれは、ディザイアとか禍津邪妄じゃなかったってことか。 でも、僕たちの十メートルほど先にいる黄金の卵から、次々に武士が現れる。そして、ゆっくりとこちらに向かってくる。きりがない! そう思っていたら、僕と白倉さんの上に金の勾玉、紫雲英ちゃんと貴織さんの上に、銀の勾玉が降りてきた。そして、紫雲英ちゃんの勾玉が僕のところ、貴織さんの勾玉が白倉さんのところで合わさる。 太極図を手にし、僕と白倉さんはキーワードを唱えた。 「真鎧纏装」 僕と白倉さんが「ヨロイ」をまとう。 白倉さんの「ヨロイ」は……。あれを「ヨロイ」、いや、そもそも服、と呼ぶことさえ、抵抗がある。ていうか、この格好はもう、いろいろとヤバいんじゃあ……。 でも、白倉さんは気にしていない、ていうより、さっきから、妙に難しい顔をしている。いや、難しい顔、じゃない。何か「とてつもないことを覚悟した顔」って感じだ。何を覚悟しているのか、わからないけど。 白倉さんが、右手に大光世を持ち、左手でその柄の覆いを抜く。それを、左の腰、太刀の鞘の下にセットする。そして、右手を開くと、まるでバネ仕掛けでもあるかのように、大光世が勢いよく二つに割れて、大弓になった。 白倉さんが大弓を左手に持ち替え、右手を天高く掲げて、キーワードを唱えた。 「THE FOOL」 その掌に、貴織さんが使うのと同じ、「カード」が現れる。そこにあるのは、絵ではなく、数字。それは「0」。 そして、その「カード」が回転を始める。でも、天地逆になっても、横になっても、「0」の形は変わらない。白倉さんが呪文のようなものを唱える。 「『0』は無限、無始無窮。始め、なければ、終わりなし。『旅人』は訪れ、去って行く……」 「カード」が光になり、その光が天に伸びて、矢になった。それをつがえるのを見て、僕も懐からクリスタルの勾玉を出した。そして、この場で使える力を……。 「……え?」 勾玉に降りてきた力、これって……!
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