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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第22回   壱の二十
 紫雲英ちゃんが御札を出して言った。
「わたしたち『テイボウ』のメンバーは、禍津邪妄や、ディザイアと遭遇したとき、それを知るために、呪符が教えてくれる事になってるンスよ」
「呪符、って、そんなもの、預かった覚えないけど?」
「わたしにもわからないッスけど、こっちに来たときに、手に入れてるみたいッス。普段は意識できないみたいッスけど」
 なるほど。いろいろ不思議な仕組みになってるみたいだ。
 合崎の表情が、豹変した。喩えでも何でもない、まさに、化け物の顔だ。
 沢子さんが、甲高い悲鳴を上げ、失神した。倒れ込んだ彼女を抱き起こそうと駆け出したとき、合崎の姿形が変わった。
 毛むくじゃらの体に、二本の腕、一本足。
 それを見て、梓川さんが言った。
「山精(サンショウ)だわ」
 僕が首を傾げたんで、浅黄さんが教えてくれた。
「本来は山に住んでる妖怪なんだがな。地方によっては、旅人の荷物を盗む、女を騙す、なんていう言い伝えがあったりする」
 何にしても、あんな怪物じゃ、うかつに沢子さんに近づけない。いったんひくと、なにかの気配がした。
 振り仰ぐと、天から何かが降りてくる。それは、金と銀の勾玉。大きさは五、六センチ程度だろうか。あの夜、僕のところに降りてきたものと同じだ。そして、今回、金色は浅黄さん、銀色は紫雲英ちゃんのところに降りた。
 つまり、この二人がアタッキングメンバーに選ばれたということ。
 二人が勾玉を手に取り、胸に当てる。
「鎧念招身(ガイネンショウシン)!」
 二人の声がハモった。
 これが「変身」のキーワードだ。アタッキングメンバー……護世士は、勾玉を手にする事で、戦闘態勢になる。着ているのは、大体は「服」だそうだけど、実質は「鎧(ヨロイ)」らしい。そして、その格好は、顕空現界つまり現実世界で、戦闘に匹敵、あるいはそれに次ぐぐらいの霊力を使った時に着ていた服装に、近い物になるらしい。
 閃光に包まれて「変身」した浅黄さんの格好は、黒いワイシャツに黒いスラックス、黒い革靴、前を開けた白いロングコート。浅黄さんは、現実世界で、これに似た格好の時に強力な霊力を使ったらしいって事。
 わからないっていうか、僕があっけにとられたのは、紫雲英ちゃんの格好だ。初めて見るけど。
 ピンクの、ノースリーブのチャイナドレスだけど、裾は膝上十五、六センチ。黒いオーバーニーソックスは、エナメルっぽい光沢があって、同じくエナメルっぽい白いパンプス。左の肩になんだかSF物のアニメっぽい白い装甲があって、両腕とも肘から先に振り袖っぽい、白いものがついてる。
 なんだ、これ?
 彼女、一体、どんな格好しているときに、強力な霊力を使ったんだろう?
 危険を感じたのか、山精が逃げ出した。
 二人が追いかけるのを見ながら、僕は梓川さんと一緒に、沢子さんを介抱した。


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