午後七時。 僕は、「明宝亭」に、晩ご飯を食べに行った。やっぱり、紫雲英ちゃんのこと、気になったしね。 でも。 「心さん、今度の土曜日、古港(こみなと)の手前にある、海浜公園へ行きましょうよ! ちょっとしたイベントがあるッス! 予定、確認しておいて欲しいッス」 「え? う、うん、いいけど」 なんか、元気だ。僕がそんなことを思ったのが顔に出たのか、紫雲英ちゃんは笑顔で言った。 「天夢ちゃん先輩は天夢ちゃん先輩、私は私。それはそれ、で、これはこれ、ッス。私が遠慮とか、そもそもそんなことする理由、どこにもないッスよ!」 ……。 切り替え、早いなあ……。 その時、近くのテーブルに座っている、二人連れの若い女性の声が耳に入った。 「あ、トモちゃんの言ってた『ミス・ハートメイカー・クミ』のサイト、閉鎖になってる」 「え、マジ? 評判良かったけど? 私の友だちも、一年前、恋愛のスピリチュアル相談で、恋を叶えてもらってて、評判だったんだ。私も、お願いしようと思ってたけど。……ああ、そういえば、最近は、『カップルメイキング』が、さっぱりダメになっちゃったって、噂があったなあ」 「そうなの?」 「うん。この二、三ヶ月、一組も、カップルができてないらしくて。ミス・ハートメイカー・クミって、『どんな恋でも叶える』っていうのが、売りだったから、最大のセールスポイントなくしちゃったら、そりゃ、お客さん、減るわよねえ」 それを聞いていた、紫雲英ちゃんが呟いた。 「ミス・ハートメイカー・クミ、廃業ッスか」 「知ってるの、紫雲英ちゃん?」 「クラスで、評判になってたッス。すっごい遠くの街なんで、直接行くことは難しいけど、ネットとかでは、友だちとチェックぐらいはしてたッス。……ああ、そういえば」 「そういえば……、何?」 紫雲英ちゃんが僕を見る。 「ネットで見たミス・ハートメーカー・クミの顔と、あの愛染明王のディザイアだった『ヤマチョウ様』の顔、どこか似てたような……」 そして、紫雲英ちゃんがスマートフォンを出し、あちこちのサイトをチェックしてて。目当ての写真を見つけたらしい。僕に、その画面を見せた。
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