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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第188回   捌の二十四
 八月七日から、本格的にC−membersのアルバイトだ。ちなみに僕は「昼シフト」。午後一時に、「朝シフト」の人と引き継ぎをして、一時半から、割り当てられたフロアの清掃だ。でも、事業所には、朝から行っておく必要がある。
 で、朝八時半に行ったら、なんだか空気が慌ただしい。
「何事ですか、この空気?」
 僕と同じ「昼シフト」で、指導係・生田(いくた)多愛(たえ)さんに聞いてみた。
 苦笑いで生田さんが言った。
「とうとう来たのよ、ミズ・CQ(クリーンクイーン)が」
「なんですか、それ?」
 僕が首を傾げると、生田さんが、ズボンのポケットから折りたたんだ紙を出した。なにかのチラシっぽい。それには、一人の女性の、バストアップのカラー写真があって、僕はそれを見て、息が止まりそうになったんだ。
「正体不明、経歴不明、まさに、謎の美女。一説に、外資系の企業の、M&Aのエージェントっていわれてるけど。ちょっと前に、彗星の如く現れて、清掃系の企業買収に動いている、本当に謎の美女」
「この名前、なんて、読むん、です、か……?」
「え? ああ、これ、滝陽華(たき はるか)」
「たき、はるか……」
 でも、こいつの顔は。
 髪の長さは、多分、背中の中ほどぐらいだけど。
 白黒の女たち……太閤后や太閤妃、あの二人の顔を足して二で割ったような、そんな印象があった。
 いや。
 この女の髪を長くすれば白い着物の女に、短くすれば黒い着物の女になるんじゃないかって、気がした。
 顔は全然別ものなのに、僕にはそう思えて仕方なかったんだ。


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