八月四日の金曜日の夜に、緊急会議があった。時間が巻き戻ったからね。 「天地否の五爻」が出た、ということで、どうにも推移を見守る以外にない状況らしい。つまり、猿太閤の復活は確実なもので、もはやそれに対処することを、考える段階に入ったって事。 奴がどんな力を持っているかは、まったくの未知数だけど、もし大淫婦なんかと関係があるとしたら、下手をすると、ダイレクトに魔災を起こす力が使えるかも知れない。 これまで以上に、危機感を持って行動しないとならない、ってことだった。 で、今日、八月六日の日曜日。今日は、昼から、天夢ちゃんとデートだ。 なんか、電話だったんだけど、彼女、妙に元気……っていうか、元気を作ってる感じがしたなあ。うまく言えないけど。 午後一時。中央区の市電駅前で待っていると、制服姿の天夢ちゃんがやってきた。 「……なんで、制服?」 僕の問いに、天夢ちゃんが申し訳なさそうに言った。 「すみません。今日は、午前中、部活……あたし、剣道部なんですけど……それが予定より長くなっちゃって。本当は、十一時三十分には終わってるはずだったんですけど。この月末に、県大会の予選があるんです」 「県大会?」 「はい。十月に、中学校から社会人までを対象にした全国大会があって、その予選ともいえる県大会が九月にあるんです。で、その県大会の予選が今月末にあって、その部内選考の説明が、急きょ、行われて。出場予定だった三年の先輩が、怪我で入院しちゃって。もしかしたら、あたし、団体戦のメンバーに選ばれるかも知れなくて……」 「すごいじゃないか、天夢ちゃん!」 代表に選ばれるのは、名誉なことだと思う。でも、天夢ちゃんは、泣きそうな顔で言った。 「冗談じゃないですよう! うちの高校、その全国大会の、高校生女子の部の常連校で、個人戦・団体戦ともに、この五年、三賞を逃したことないんです。しかも、去年、一昨年と、準優勝だったんで、三年の先輩の気合いの入りようが、半端じゃなくて……!」 泣きそう、じゃなくて、本当に涙がにじんでる。 「で、でも、天夢ちゃん、すごいじゃないか、冥空裏界での活躍見ると……」 「あれは、勾玉の力です……」 ……それは、僕も感じてるかな? 体捌きとか、明らかに「実力以上」だもんな。 「辞退したんですけど、結局、来週の部内選考会に、出ることになっちゃって」 「天夢ちゃん」 と、僕は天夢ちゃんの両肩に手を置いて、言った。 「もっと、自分を信じて」 「救世さん……」 僕を見上げる天夢ちゃんの目を見ていて、ふと爺ちゃんが言った言葉を思い出した。 「信の一字を打ち立てろ」 もしかして、そういうこと、なのかな?
|
|