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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第183回   捌の十九
 そのあと、天夢は周囲を確認して回った。ムラマサが「近くまで来ていた」と言った言葉が気になったのだ。あれは「ムラマサが近くまで来ていた」の意だろうが、「天夢たちの方が、近くまで来ていた」にも、とれないか?
 調べたら、近くに骨董屋があり、そこに美術品としての日本刀が一振りあって、店主も知らないうちに、鞘の中の刀身が折れていた。銘は「村正」。
 もしかすると、ムラマサは、「村正」の銘を切った刀を「縁」として、実体化するのかも知れない。
 報告すれば、対処法がわかるかも知れない。
 ふと「報告書には、自分もレベルアップできた」ことも書かねばならないと、思い至った。そして。
「……『あのこと』、スカートの中のことまでは、書かなくていいよね……?」
 と思ったとき、紫雲英の言った言葉の意味に気づいた。
「……ああ、そっか。紫雲英ちゃんにわかっちゃったんだ……」
 ミニのプリーツスカート、しかも、あれだけ動き回ったのだ、天夢のスカートの中が、どのような状況になっているのか、見えたに違いない。
 どうしよう? これから先も、こういうことは起こりうる。女性メンバーだけならまだしも、男性メンバーがいたら、自分は恥ずかしさで生きていけなくなる。
 一瞬、「あれ」を持っていれば、と思ったが、顕空の物は持ち込めないし、鎧念を纏ったあとで「そんな余裕」はないだろう。
 いろいろ考えた末。
「白倉さんなら、何かいい方法を……」
 白倉新なら、何か、いい手を考えてくれるかも知れない。
「何か、変な交換条件を持ちかけられるかも」とは思ったが。背に腹は代えられないし、それほど、無茶なことは言ってこないだろう、とも思った。
 ……言ってこないと、信じたい……。

 次の日の朝。
 本部には戻らず、自宅に戻った天夢は、メールをチェックした。届いたメールでは、二十六日の夜から、三十一日の夜に直結し、九月一日に巻き戻った、とのことだった。影響は占断待ちだが、ごく軽微なものになるだろう、とのこと。あの禍津邪妄も、八岐大蛇も、オルトロスも出現した形跡はなかったという。紫雲英、浅黄及び、千紗からの報告だった。


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